モラルの教育と美意識 : 日本的自然観を通して
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
道徳の基本的な修得は身体の型を通した全人格的な体験によらなければならない。そしてモラルの回復を可能とする道徳の根拠は、宗教的体験における主観と客観の合一、「自他一如」の境地に基づいている。道元において「身心脱落」のとき、自然と自己は一つとなり本来的な姿を現わす。ここでは善は自ずと行われ、悪は避けられる。日本人の宗教意識の根底には、その風土における固有の自然観、生命観が存在し、そこには多神教的なアニミズム及びシャーマニズムが存在したといえよう。これが日本人の美意識(わび、さび等)の展開の根源にあったのである。モラルの崩壊が危惧され、深刻な環境の危機や生命倫理の問題等を抱える現在、この日本人の自然との一体性や調和に生命のつながりやたましいの故郷を求めてきたことを再認識することはなによりも肝要である。モラルの回復とその教育は、日本的自然観に根ざした宗教的体験やスピリチュアリティー、そして美意識を通して初めて可能となる。
- 2006-04-30