自己免疫性心筋炎における心筋/非心筋細胞の形質変換と浸潤細胞の特徴
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概要
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心筋炎の後,心臓リモデリングが進行すると拡張型心筋症様慢性心不全状態となる.心筋炎における心臓リモデリングでは物理的負荷のほかに,炎症性浸潤細胞やサイトカインなども成因にかかわっていると考えられるがその詳細は明らかになっていない.そこで我々は心臓から心室筋細胞(心筋細胞),浸潤細胞(T細胞,マクロファージ),非心筋非炎症性細胞を分離する方法を確立し,ラット実験的自己免疫性心筋炎(EAM)における各細胞群の遺伝子発現の特徴について検討を行った.正常ラット,急性期および慢性期EAMラットの各心臓にLangendorff還流装置でコラゲナーゼを還流し細胞の単離を行い,次いでステンレススチール製の篩を使い心筋細胞を分離した.残りの非心筋細胞群をビーズ抗体・マグネット細胞分離装置を用いてさらにT細胞,マクロファージ,非心筋非炎症細胞へ分離した.各検体よりRNAを抽出した後,定量的RT-PCRを行い心筋炎の病態形成に関わると思われる蛋白の発現を遺伝子レベルで検討した.急性期EAMでは心筋細胞の収縮,弛緩をつかさどるカルシウムハンドリング関連蛋白リアノジン受容体,球状筋小胞体Ca-ATPase,カルセクエストリンの減少がみられた.心臓リモデリングに関与しているアンジオテンシンーアルドステロン系についてはアルドステロン受容体が心筋細胞で強く発現し,アンジオテンシン変換酵素,アンジオテンシンII type 1受容体は非心筋非炎症性細胞で主に発現していた.また心筋炎の急性期にはアルドステロン合成酵素が非心筋非炎症性細胞,マクロファージで僅かに発現していた.サイトカイン,ケモカインの発現においてはIL-10やMCP-1が非炎症性非心筋細胞より発現しており,おそらく線維芽細胞からの発現によるものと考えた.またEAMの初期にみられるオステオポンチンはマクロファージ,非心筋非炎症性細胞から分泌され,その受容体の1つCD44を持つT細胞及びマクロファージ自身に対し細胞の活性化を促進させていると考えられた.また接着因子としての作用を併せ持つケモカイン,フラクタルカインも心筋細胞から強い発現が認められた.これは,外界からの異物に対する免疫機構を心筋細胞自身が備えている可能性が推測された.心筋細胞と非心筋非炎症性細胞は,互いに密接に関わりながら病変を形成するだけでなく,免疫担当細胞とも密接にクロストークしながら,心筋炎の病態形成に関与するものと考えられた.
- 新潟大学の論文
- 2004-01-10
著者
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