昇汞に対する大豆白絹病菌の抵抗性について
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概要
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1)本論文には大豆白絹病菌Pellicularia rolfsii (Curzi) West.の昇汞抵抗性獲得現象についての研究結果を記載した.2)各種濃度の昇汞を含有した諸種寒天培地上に於ける,本菌々叢の発育は,稀薄醤油,馬鈴薯煎汁,稲藁煎汁,ツァペックの各寒天培地では夫々の標準より10^<-5>乃至10^<-6>モルの濃度で生育が却って良好であり,稀薄醤油並に玉蜀黍粉煎汁寒天では10^<-5>モルの低濃度で生育が抑制される.3)10^<-4>モルの昇汞を含有した玉蜀黍粉煎汁寒天培地に本菌菌核を継代培養すると,原菌の生育に比べて,1代では生育が不良であり,4代では却って良好となり,且つ,10^<-3>モルの高濃度の昇汞含有培地に生育可能となり明らかに抵抗性を増高した.8代では4代と生育は略々同じであるが,8代継代培養した菌を昇汞無含有培地に1代培養するとその抵抗性は消失する.4)昇汞抵抗性獲得菌は,昇汞,硝酸第二水銀,硫酸銅,塩化第二銅等に対しても原菌より生育が良好であって,抵抗性を増すか又は不感受性である.5)菌核を各種濃度の昇汞水溶液に浸漬後,玉蜀黍粉煎汁寒天培地上に発育させると,生育は昇汞低濃度の場合標準区のものより生育が促進せられ,その傾向は20及び30分処理に於て10及び60分処理のものより明瞭であった.6)昇汞抵抗性獲得菌を,昇汞,硝酸第二水銀,硫酸銅,塩化第二銅の各水溶液で30分間処理したところ,原菌よりも抵抗性乃至不感受性となった.7)昇汞抵抗性獲得菌と原菌との間に嫌触現象は起らない許りでなく,菌叢及び菌核組織ではその形態及び色彩に差が認められない.併し抵抗性獲得菌の菌核は大型となり,且つ,形成量が減少する.8)抵抗性獲得菌は大豆に対して病原性を有し原菌との間に病原性の差を認められない.
- 大阪府立大学の論文
- 1955-12-25