アマクサアメフラシの個体発生にみられる貝殻と軟体部の相対成長
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概要
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孵化幼生から成体に至る種々の成長段階にあるアマクサアメフラシについて, 体長と殻長, 殻長と殻巾, 殻長と殻口長, および殻口長と殻巾の関係を調べて次の事実を明らかにした。体長に対する殻長の関係は二相に分けられる。その第1相は, 浮游幼生期および変態後の貝蓋を持つ幼個体期からなり, 殻長は体長の増加に伴って比例的に増大する。体長一殻長関係の第2相は, 貝蓋を捨てた若い個体群から成体に至る広範囲の個体からなり, この時期には殻より軟体部の成長が速くなるので, 体長が増すにつれて貝殻は相対的に小さくなる。殻長に対する殻口長, および殻口長に対する殻巾の関係は何れも三相に分けられる。その第1相は浮游幼生期, 第2相は変態後の貝蓋を持つ幼個体期, 第3相は貝蓋放棄後の若令期から成体期, に対応する。しかし, 殻長に対する殻巾の関係はアメフラシの成長段階にかかわらず一定しており, 殻巾は殻長の増加に比例して増大する。一般に相対成長の変化は, 全体に対する部分の比成長率がある成長段階で変化することによって生ずるものと考えられる。上述の体長一殻長関係では貝蓋放棄の時期に, 殻長一殻口長および殻口長一殻巾の関係では変態と貝蓋放棄の時期に, 比成長率が変化する。このような変化が生ずる発生段階には, 成長の様相に変化をもたらすような未知の要因がアメフラシの体内部に発生したことを示唆する可能性が大きい。
- 日本貝類学会の論文
- 1981-04-15
著者
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