冬の野外におけるアマクサアメフラシ若令個体の成長
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概要
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佐渡ケ島北西部の沿岸では, 毎年厳冬期にアマクサアメフラシの匍匐型若令個体が緑藻に付着して出現する。その中の最も若い個体は一様に, 殻長0.48mm, 体長0.55mm, 貝蓋0.24×0.30mmを示し, 孵化幼生のほぼ3.7倍の長さに成長している。この個体の発生段階は, 形態的特徴および行動様式から, 明らかに浮遊生活から匍匐生活への変態を完了した直後の時期に相当する。この若い個体は緑藻を摂食して貝殻および側足を形成し, 殻長が1.05-1.28mmに達した段階で貝蓋を捨てる。貝蓋放棄の時期と前後して, 側足は殻を覆い始め, 頭部触角は巻いて成体と同形のものに変り, 飴色の体色が現われ, 更に嗅覚突起が形成されて次第に成体の体形に近づく。上述の成長変化を示す個体の各時期の大きさは, 冬期の採集で得た個体の方が, 室内飼育したアメフラシ類についての報告値よりはるかに大きい。この相違は, アメフラシの種類差によるものではなく, 環境要因, 特に水温の違いによるものと考えられ, 低温環境ではより大型化して各発生段階が進む傾向のあることを指摘した。
- 日本貝類学会の論文
- 1981-01-31
著者
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