マーティン・R・デラニーの闘争の宗教的次元
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概要
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これまでの, マーティン・R・デラニー(1812-1885)の研究では, 彼の思想形成において宗教が演じた役割が完全に無視されている状態である。その生涯を通じて, 彼のアフリカ系アメリカ人闘争の思想に宗教が影響をおよぼしている。彼は黒人の宗教心の深さ, そして黒人教会の思想的影響の大きさに気付いていたので, 彼は自分の闘争戦略を正当化するためそれを宗教で包んだ。彼はまた, 黒人のアメリカ主流への統合を促すために宗教を使った。彼はキリスト教の諸段階-自由意志擁護主義, 功利主義, 世俗主義-が, 有力な黒人教会において超俗的, 摂理決定論的な姿勢が優勢だったために瞳昧になっていることを明らかにした。黒人の地位向上, 統合を促進するため, 彼は, 倹約, 勤勉, 物質主義を提唱した。彼は, 物質主義とキリスト教の教条は矛盾しないとする彼の信念を正当化する淵源を聖書に求めた。そして, その世俗主義と物質主義の正当化によって, 超世俗主義を善とし, 世俗的, 物質的傾向を禁じている黒人教会と対立関係に陥ることとなった。しかし, 1850年の逃亡奴隷取締法の成立によって, 多くの黒人たちは統合への夢を捨ててしまうに至った。デラニーは, この後の国外集団移住を唱える者, 民族主義者の運動においても指導的役割を担った。彼は黒人に, 自分たちの最終目標の実現のために方向転換をするよう促した。国外集団移住を正当化するため, 彼は再び宗教に戻った。聖書を引用することによって, 国外集団移住は, 黒人の精神的向上への神聖不可侵の戦略であるとの彼の主張を強めようとした。しかしながら, 彼の国外集団移住の宗教的説得はごく少数の黒人の心を動かしたに過ぎず, 国外集団移住は大規模な社会運動になることはなかった。黒人の大多数は, アメリカ合衆国の中での社会的変化の可能性に期待を引き続き寄せていたのである。
- 上智大学の論文
- 1993-04-30
著者
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アデレーケ タンデ
Division Of Multidisciplinary Studies North Carolina State University Raleigh North Carolina
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アデレーケ タンデ
Department of History, Loyola Uiversity