クレランス・ランドールと日中貿易
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概要
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アイゼンハワー政権において, 経済外交政策立案に重要な役割をはたした外交経済政策委員会(Council on Foreign Economic Policy)の議長クレランス・ランドールについての研究は, まだほとんど存在しない。自由貿易主義者であるランドールは, 世界貿易の拡大こそがアメリカの長期的利益になるという確固たる信念のもとに, 東西貿易の統制解除による共産圏諸国との貿易の拡大を精力的に擁護した。日中貿易に関してもランドールは, 当初は東西貿易の拡大という観点から統制解除を支持していたが, 外交経済政策委員会の議長に就任したのちは, 日米関係の改善という同盟政治の要請上, 日中貿易への統制は解除されるべきだと主張するに至った。すなわち, 1954年, ソ連・東欧圏に対する貿易統制の一部が緩和されて以来, 中華人民共和国に対するより厳しい貿易統制は現実的効果も著しく低下したのみならず, 西側同盟国間, 特に日本と西欧の間に不公平感を生じるに至った。アイゼンハワー大統領やダレス国務長官は, 早くからこの問題が西側同盟の結束に与える悪影響を懸念していたが, 1956年にランドールが政策決定の中枢部分に参入すると, 対中国貿易統制の緩和への動きは, 一段と強まった。アイゼンハワー政権の日中貿易の統制緩和の裏にはもう一人の立役者が存在していたのである。
- 上智大学の論文
- 1991-12-20
著者
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清水 さゆり
Departmenrt Of History Michigan State University
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清水 さゆり
U.S. Diplomatic History, Toyo Eiwa Women's University