悩める大国アメリカ : 1950年代の禁輸政策の一側面
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概要
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本稿は1950年代におけるアメリカの対共産圏貿易統制政策の変容過程の分析を通じて、冷戦期アメリカの対同盟国政策の一側面をうつし出すことを目的としている。朝鮮休戦、インドシナ講和後の国際関係の変化を背景に西欧諸国および日本は、アメリカの主導のもとにうちたてられた戦後対共産圏禁輸制度の改訂を要求する。アイゼンハワー政権は、中国共産主義政権の脅威認識の差異、国際貿易統制の目的自体の解釈の違いなどに基づく西側同盟内部の利害調整に対して現実主義的な基本的態度で臨む。しかし、肥大した連邦政府官僚機構による速やかな政策立案・調整の失敗、ココムの多角主義を守ることを目的とした2国間交渉方式の挫折、米英協力態勢の終結等を原因として、1957年、いわゆる「チャイナディファレンシャル」の事実上の撤廃とともに国際貿易統制システムは大きな変換期を迎えるに至る。
- 上智大学の論文
- 1997-03-31