動詞の意味から見た受身文の多様性と連続性 : 「打たれる」を対象として
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概要
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本論は,構文的・意味的な多様性に富む「打たれる」を取り上げ,意味的側面から受身文に見られる多様性と連続性を論じたものである。まず,「打たれる」の意味をパターン化した上で,動詞「打つ」との意味的関連性を検討した。その結果,「能動-受動」の対応関係が成立するものとしないものがあることが分かった。後者が「打つ」の基本義を受身化したものから意味派生したことが明らかとなり,日本語の受身文は一つの述語を元にして,能動文で表わせなかった意味を創出する,重層的な表現であることが分かった。また,ニ格名詞句の内実と対応して,受身文の多様な意味変容とともに,受身のあり方も,外在的な動作主による具体的な働きかけ性(他動性)を被る受身から,内在的かつ抽象的な心的作用による自発的な受身(自動性)まで,一つの連続性をなしていることが明らかになった。
- 日本語学会の論文
- 2004-10-01