医薬品産業研究開発機関の研究交流ネットワーク : 筑波研究学園都市を事例に
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概要
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近年,企業活動においてイノベーションが重要とみなされている。地理学的研究においては,大学や関連諸機関との近接,集積の重要性が指摘されている。しかしながら,一方では,近接性や集積はそれほど重要ではないと主張する研究も存在し,イノベーションと空間との関連性については定まったものはない。本研究は,筑波研究学園都市における大手医薬品企業の研究開発機関,研究者間の研究交流を取り上げ,イノベーション創出に近接性が重要かどうかを明らかにすることを目的とする。民間研究開発機関は,国立研究機関とのネットワークを構築するため当初は筑波への立地を指向した。しかし,実際には地域内での強固な研究交流はみられない。この要因として,アカデミックな成果を追求する国立研究機関と利益を追求する民間研究開発機関との研究開発に対する姿勢の違い,いわば組織的近接性の不足が影響を及ぼしている。また,研究支援機関は民間研究開発機関のニーズを把握しておらず,研究交流を促進する役割は不十分である。日本においては,終身雇用をはじめとする労働慣行などが影響し,イノベーション創出には企業外部よりも内部が重要であることが明らかとなった。特に,大手企業の場合,豊富な研究開発費をもち,イノベーションのための資源を外部に求める必要性が中小企業に比べると少ない。そのため,必ずしも他機関との近接性を必要としてわけではないといえる。
- 地理科学学会の論文
- 2006-04-28
著者
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