ニフェジピン歯肉増殖症におけるランゲルハンス細胞の上皮内分布および密度に関する免疫組織化学的研究
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概要
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宿主免疫機構に関与するランゲルハンス細胞(LC)のニフェジピン(NF)歯肉増殖症における役割を調べる目的で,NF誘発性歯肉増殖症患者(NF-responders, R群),NF非感受性歯周炎患者(NR群),プラークに起因する増殖性歯肉炎患者(ND群)および全身疾患を持たない臨床的健康歯肉保有患者(Ctrl群)から得られた歯肉組織中に存在するLCの上皮内分布ならびに存在密度を抗S-100蛋白抗体を用いて検索し,比較検討した。各群からそれぞれ5名ずつ被検者を任意に選択し,患者から同意を得た上で歯周外科時あるいは抜歯時に試料を採取してパラフィン包埋連続切片を作製した。これらの切片にウサギ抗S-100蛋白ポリクローナル抗体を用いて免疫染色を施し,歯肉上皮内におけるS-100蛋白陽性細胞の組織学的検索を行った。なお,計測時に全S-100蛋白陽性細胞数から連続切片におけるシュモール染色陽性細胞数を差し引いたものをS-100蛋白陽性LC数とした。その結果,S-100蛋白陽性細胞は,各群の歯肉上皮の基底層から有棘層にかけて散在性に存在していた。なかでも,歯肉上皮の単位面積あたりに存在する総上皮細胞に対するLCの百分率はR群>ND群>NR群>Ctrl群の順に高く,R群とND群,R群とNR群,ND群とNR群,R群とCtrl群,およびND群とCtrl群との間にそれぞれp<0.05, p<0.01, p<0.05, p<0.01およびp<0.05で有意差を認めた。なお,NR群とCtrl群との間には有意差は認められなかった。また,歯肉上皮をLCに富んだ領域と少ない領域に分けた場合,LCが多く集積する上皮直下の結合組織中にCD 3陽性細胞が多数浸潤する傾向がみられた。この傾向は,特にR群において顕著であった。さらに,結合組織を炎症性細胞浸潤密度の高い領域と低い領域に分け,その直上の上皮内におけるLCの出現頻度を比較すると,ND群でのみ有意な差がみられた(p<0.05)。また,炎症性細胞浸潤密度の低い領域におけるR群のLCの比率は,他群に比べて有意に高い値を示した(p<0.01)。以上より,NF歯肉増殖症では口腔上皮内にLCが有意に増加し,またその上皮直下結合組織に多くのCD 3陽性細胞が浸潤していることから,本疾患においてこれらの細胞の果たす役割が増強されている可能性が示唆された。しかし,炎症性細胞浸潤の程度とLCの分布との関連を明らかにすることはできなかった。
- 特定非営利活動法人日本歯周病学会の論文
- 1998-06-28
著者
-
尾崎 幸生
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座歯周病学分野
-
原 宜興
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座歯周病学分野
-
原 宜興
長崎大学歯学部歯科保存学第二講座
-
加藤 伊八
長崎大学歯学部歯科保存学第二講座
-
尾崎 幸生
長崎大学歯学部歯科保存学第二講座
-
原 宜興
長崎大学 歯 第2歯保存
-
國松 和司
長崎大学歯学部歯科保存学第二講座
-
田尻 公一
長崎大学歯学部歯科保存学第二講座
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