歯周組織の破壊と再生 : 実験的遊離歯肉移植後の修復過程
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概要
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慢性辺縁性の炎症性病変が波及しにくい前庭開窓部では,遊離歯肉移植後の修復過程が移植床の骨膜の有無によってどのように影響されるのかを歯周組織の破壊と再生という見地から検索した。実験動物としてビーグル成犬9頭を用い,上下顎切歯部と上顎左右前臼歯部に,右側には骨膜上,左側には骨面上の遊離歯肉移植を試み,術後1,2,4週,2,3,6ヵ月,1,2年の実験期間で肉眼的,並びに組織学的に観察した。骨面上移植では術後早期に高度の骨吸収が生じ,治癒は骨膜上移植よりも1週程度遅れたが,術後3ヵ月を経る頃から歯根膜細胞の存在する根面に沿って新生骨梁が形成され,組織複合体としての修復が得られた。また,術後の審美性では,切歯部の骨面上移植部で周辺組織との境界が目立たずに優れている例があったが,移植床の狭い前臼歯部では移植部は盛り上がった形状を呈していた。歯周組織の破壊は外科的侵襲の小さい骨膜上移植部では移植床の歯槽骨表層に留まっていたのに対して,侵襲の大きい骨面上移植部では深部歯周組織に及び,歯槽骨の完全な消失を起こした。その結果,破壊後の組織修復は,前者では主に歯肉領域で行なわれるのに対して,後者では歯周組織全体で行なわれることが多かった。組織修復の過程における歯周組織の再生という点では,直接的には歯根膜細胞が歯周組織複合体としての再構成に大きく関与していることが示唆された。今回の検索の結果,歯周組織の破壊には炎症性病変が,再生には歯根膜が大きく関与していることが示され,移植部の可動性,後戻り現象,さらには審美性などは,破壊後の再生が歯周組織複合体として再構成し得るか否かに関連すると思われた。
- 特定非営利活動法人日本歯周病学会の論文
- 1991-12-28
著者
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