狭心症を合併した腹部大動脈瘤に対する同時複合手術
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概要
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狭心症(AP)と腹部大動脈瘤(AAA)を同時に有する症例は稀でない.このような症例に対して,従来冠動脈バイパス術(CABG)とAAA reoairは二期的に行われることが多かった.また一期的同時手術は手術侵襲が過大ゆえ,その適応は限定されてきた.しかし体外循環非使用心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)の導入で,同時手術はその侵襲が低減し,適応を拡大できる可能性がある.【目的】当科でのOPCAB+AAA reoair同時手術の成績からその妥当性を検討した.【対象】2000年1月から2004年8月までに当科で施行したOPCAB+AAA reoair同時手術9例(男:女=9:0,年齢61〜78歳,平均70.4±6.3歳)を対象にした.冠動脈病変の内訳は2枝病変4例,3枝病変1例,左冠動脈主幹部を含むもの4例であった.AAA径は5.5〜10.0cm,平均7.0±1.6cmであった.【手術】胸骨正中切開によるOPCABの後,腹部正中切開・開腹法によるAAA reoairを行った.【結果】手術時間は365〜645分,平均499.7±107.8分,バイパス数は1〜4本,平均2.4±0.9本であった.使用グラフトの内訳は,左内胸動脈7例(sequential bypassを1例含む),右内胸動脈3例,右胃大網動脈1例,橈骨動脈1例,大伏在静脈5例(sequential bypassを1例含む)であった.体外循環下CABGへの移行はなかった.Amreoairは全例Y型人工血管置換術で,1例に片側内腸骨動脈の再建,1例に片側内腸骨動脈と下腸間膜動脈の再建を要した.集中治療室管理は38〜136時間,平均63±41時間で,食事は3〜9病日,平均4.9±1.8病日に開始できた.術後在院期間は12〜54日,平均24.0±12.3日であった.在院死はなかった.合併症は大伏在静脈採取部の創感染1例,開腹創MRSA感染1例,下肢動脈血栓症1例,遅発性心タンポナーデ1例計4例に発生したが,全例後遺症なく治癒した.術後遺影でグラフト末梢側吻合合計22箇所はすべて開存していた.【結語】OPCAB+AAA reoair同時手術の成績は満足できる内容であった.本法は,二期的手術に伴うリスクの回避,治療期間の短縮などの長所もあり,APを合併したAAAの治療として妥当である.
- 新潟大学の論文
- 2005-04-10
著者
-
青木 賢治
医療法人立川メディカルセンター立川綜合病院心臓血管外科
-
杉本 努
医療法人立川メディカルセンター立川綜合病院心臓血管外科
-
山本 和男
医療法人立川メディカルセンター立川綜合病院心臓血管外科
-
桑原 淳
医療法人立川メディカルセンター立川綜合病院心臓血管外科
-
吉井 新平
医療法人立川メディカルセンター立川綜合病院心臓血管外科
-
春谷 重孝
医療法人立川メディカルセンター立川綜合病院心臓血管外科
-
桑原 淳
立川メディカルセンター立川綜合病院心臓血管外科
-
山本 和男
医療法人立川メディカルセンター立川綜合病院循環器・脳血管センター心臓血管外科
-
春谷 重孝
医療法人立川メディカルセンター立川綜合病院循環器・脳血管センター心臓血管外科
-
春谷 重孝
立川相互病院
-
吉井 新平
立川綜合病院循環器・脳血管センター 心臓血管外科
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