非言語的コミュニケーションに及ぼす特性不安の影響 : 非言語的コミュニケーション成立の妨害に関する3つの仮説の検討
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概要
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本研究は,表情と身体動作による感情の非言語的コミュニケーションに対する特性不安の影響を検討した。感情の次元については,喜び・悲しみ・嫌悪・怒り・驚きの5つが使用された。特性不安はMASで測定した。特性不安の影響は,表出者と認知者のそれぞれについて検討された。表出者は高・低の2群,認知者は高・中・低の3群に分けられた。実験1では,不安高・低8名ずつ計16名が被験者となり,表出者の特性不安が,非言語的表出行動に及ぼす影響が検討された。実験1における主要な結果は次の通りである。1.高不安者は,低不安者より,無意味な非接触動作の使用時間が長い。特に,腕をふる動作の使用時間が長い。2.高不安者は,悲しみ表出において,低不安者より,無意味な身体動作の頻度,身体動作全体の頻度が少ないが,無意味な身体動作の使用時間は長い。3.高不安者は,怒り表出において,低不安者より,有意味な身体動作の頻度が少なく,無意味な身体動作の使用時間が長い。特に,無意味な身体接触動作の使用時間が長い。4.高不安者は,低不安者より,嫌悪の体験談を長く話す。実験2では,実験1の表出者から,高・低両群から4名ずつ計8名を表出群として構成した。さらに,認知群として,不安高・中・低の3群各14名ずつ計42名を構成した。これら,表出群と認知群によってなされる感情の非言語的コミュニケーションについて検討した。実験2における主要な結果は次の通りである。1.高不安表出者は,低不安表出者にくらべ,喜び表出の強度を弱く認知される。2.高不安表出者は,低不安表出者にくらべ,悲しみ表出において,正しく認知され,その強度を強く認知される。3.低不安表出者は,高不安表出者にくらべ,嫌悪表出を正しく認知される。4.高不安表出者は,低不安表出者にくらべ,その表出を,悲しみや恥と認知される。5.低不安表出者は,高不安表出者にくらべ,その表出を,驚きや軽蔑と認知される。以上の結果をもとに,引きこもり仮説,解消仮説,および表出傾向・認知傾向仮説と呼ばれる非言語的コミュニケーションの妨害を説明する3つの仮説の検討を行った。実験1では主に引きこもり仮説と解消仮説を検討した。その結果,感情のタイプによる差異が見られたが,解消仮説を支持する知見が多く得られた。実験2では,主に表出傾向・認知傾向仮説の検討を行い,とくに高不安者の表出傾向の影響かコミュニケーションの成立に大きな影響を与えていることが分かった。
- 千葉大学の論文
- 1994-02-28
著者
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