日本生命の危険選択におけるコンピュータシステムについて
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概要
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本日は危険選択のうちの新契約の診査と査定におけるコンピュータシステムについてお話しをさせていただきます。生命保険会社の危険選択における機械化については,昭和41年に今宮,昭和52年に安藤が当学会で既に発表しています。両者とも機械化による査定業務のメリット(正確,迅速,低コスト)とともに,査定のために機械に入力されたデータの統計資料,嘱託医管理資料,診査料支払事務への利用が,更に大きなメリットであると述べています。しかしそれだけ広範囲なシステムの開発となると,危険選択部門単独では不可能で,全社的な事務合理化,機械化の一環として実施されるのが望ましいとも述べています。その後各社でそれぞれその方向で開発が進められていますが,当社においても全社的な機械化スケジュールに合わせて,査定,統計,嘱託医管理の機械化を進め,特に査定には人工知能Artificial Intelligence (以後AIと略す)による査定を導入しましたので,それを中心に当社の危険選択におけるコンピュータシステムの全体像をお話しさせて戴きます。図1は全体像の概略図で,詳しくは図2,図3をご参照下さい。告知書,診査書からパンチャーによりパンチ入力された告知,診査所見のありなし情報,身長,血圧値などの数値項目情報,申込書から入力された死亡保険金,年令などの契約内容情報をもとに,機械査定(数値査定,一次査定)が行われます。この段階ですべての情報に異常がなく,かつ過去資料(医学的情報,給付支払情報)もない場合は勿論,数値項目情報のみに異常があってそれ以外は告知書,診査書情報,申込書情報に異常がなく,過去資料もない場合は,この段階で査定が完結します。それ以外のものは,すべて査決定リストが出力されて二次査定に回付され,ハンド査定に頼ることになります。この部分にたいして何とか人力に頼らず機械査定出来ないものかと考えて,AI査定システムを昭和63年4月より導入しました。このシステムについては第一部で説明します。当社では社医の診査を円滑,正確,低コストに実施する為に過去の診査,査定時の情報,給付支払情報をもとに「社医選択情報システム」を昭和59年9月より導入し,社医による選択情報の現地リアルタイムの活用をしています。このシステムについては第二部で説明します。一次査定(機械査定),二次査定(医務査定,AI査定)が完了しますと,これらの情報を登載した新契約ファイルが作成されます。この新契約ファイルから医務,査定関係のデータ項目を中心に抽出し,これをデータベースとした医務新契約ファイルを年1回作成しています。この医務新契約ファイルをベースとして,各統計作成処理を行い,医事統計と管理統計を構築しています。管理統計のひとつとして出力された医別個人別死亡・給付統計データと短期死亡データに加え,診査書より入力された診査情報(診査件数,診査料)とC/S入力の診査医属性データをもとに診査管理ファイル(FOCUSファイル)が作られます。この診査管理ファイルから診査を担当する社医,嘱託医,面接士等の診査機関の診査内容の質的管理を目的とした診査機関管理システムを昭和60年3月に導入しました。更に医務新契約ファイルをもとに診査内容統計表による管理システムを昭和62年8月に導入しました。これらの診査機関管理システムについては第三部で説明します。医事統計では医務新契約統計を出力するとともに,死亡・諸変更データや入院・手術等の給付金支払データをもとに保険年度式で統計処理を行っている主契約標準体および条件体統計,特約標準体および条件体統計などがあり,事業年度式で統計処理を行っているものに特定契約統計があります。この医事統計システムについては第四部で説明します。
- 日本保険医学会の論文
- 1988-12-20
著者
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