滑膜の発生とコラーゲンの分布変化に関する電子顕微鏡及び免疫組織化学的研究
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概要
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関節の発生に伴う滑膜の変化をラット膝関節を用い,電子顕微鏡およびI,III型コラーゲンの免疫組織化学によって検討した。胎生16日では関節腔は形成されておらず,予定関節領域の間葉組織は,無定形基質に富むものの膠原線維はほとんど観察されなかった。胎生18日になると明瞭な関節腔が形成されたが,腔をとり囲む細胞外基質の形態は胎生16日とほとんど変化はなかった。生後3日では,間質に膠原細線維が出現し,また滑膜表層には部分的に細胞が密に集積した領域が現れた。こうした領域は,生後23日から35日では滑膜最表層の全周を被い,3〜4層の細胞が密集した lining cell layer となった。また,この層には膠原線維が特に緻密に配列していた。免疫組織化学の所見ではIII型コラーゲンの陽性反応は,生後3日より滑膜表層に部分的に現れその後次第に広がり成体では滑膜最表層全周に認められるようになった。I型コラーゲンは,発生初期より弱く認められ徐々に増強していった。以上の結果より,滑膜組織の形成・成熟と膠原線維の変化との間に密接な関係があるものと推定された。
- 北里大学の論文
- 1992-10-31