沈黙が語る時 : 戦争体験の継承と個別のリアリティ
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概要
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戦争の非体験者が非体験者に平和を語り継いでいこうとする時, 戦争の何を, どのように語り, それを平和活動へとつなげていけばよいのだろうか? 沈黙という語りが, 戦争継承の一つのあり方である。本稿では, ひろみさんという女性の語りを通して, 沈黙が語るためには何が必要かを考えてみたい。彼女の両親は, 沖縄戦を体験しながらそのことについてはほとんど語らなかった。彼女の父親は, いくつかの戦争についての普遍的な言葉を語ったにすぎない。しかしながら, 夢にうなされるなどの戦争体験の断片を垣間見せた。ひろみさんが, 父親の普遍的な言葉と戦争体験の断片, そして沖縄戦に関する知識から「戦争」を構成した時, 沈黙は戦争体験を語るのである。彼女の母親は, 戦争体験について頑なに何も語ろうとせず, 自らの体験を本や映画によって描かれる戦争イメージと一線を画した。ひろみさんは母親の態度から, 平和な生活は戦争を日常生活から隔絶することによって保たれるのだと受け止めている。
- 甲南女子大学の論文
- 2004-03-18
著者
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