越境するエレガンス : コムデギャルソンをめぐる魂の現象学の試み
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概要
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魂とは, ひとそれぞれの個性や来歴とわかちがたくむすびついた, 心の「機微」や「深み」のことである. そうした魂の存在に気づくとき, われわれの意識は, 自我 (現実世界を合理的・意志的に生きる主体) から, 魂へとシフトする. そして魂の観点をもつようになった意識は, 世界の魂 (美) に開かれていく. 魂の現象学とは, そうした人間と世界の両者の魂の現象に即して, そこにみられる論理をたしかな言葉へともたらそうとする試みである. 本稿では, 服飾という現象が扱われた. 服飾とは, 人間の魂と世界 (服) の魂との相応・融合である. 本稿では, とくに創造的なブランド, コムデギャルソンの心理学的な分析検討がおこなわれた. コムデギャルソンの創造性は, 既成の意味の網目を慎重に, 大胆に, 巧妙に解き, 意味以前の物自体, 身体自体の次元に到って, そこにおいて創作をおこない, 人間の存在を問いつつ, 「エレガンス」の名に値する, 新たなものを樹立することであることがわかった. その背後にはたらく元型的な力として, ギリシア神話の神々が, 見通されえた. まずクロノスに言及され, その創造的にして保守的な特質, 抑うつを惹起する邪悪な力が, どのようにコムデギャルソンの創造性と関連しているかが, 論じられた. またコムデギャルソンの提示する異形のエレガンスの背後に, 母親に捨てられた醜怪な子, プリアポスが, その母, アフロディーテにいとおしげに抱きしめられる様が, 透見されえた. そして本稿では, ひとつの臨床事例が提示され, 以上の論にもとついて, その事例の理解が深められた.
- 2004-03-31
著者
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