「認知的不協和」と態度変容の関係 : "強制承諾"場面における態度変容研究を中心に
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概要
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Festinger & Carlsmith (1959)の"強制承諾"研究以来長年続けられた反態度的行動承諾に支払わされた報酬の態度変容に及ぼす心理的効果に関して,不協和効果(負の関係)と誘因・強化効果(正の関係)の理論的・実験的分析の争点が紹介され,両立場の解釈の対立はFreedmanらによる不協和と賞の相対的強度の力関係という観点からの解釈によって解消されることが判明した。そして,両効果の優勢を決定する臨界要因としての不協和の発生条件に関して,Brehm & Cohen ; Aronson, Bramel & Collins ; Bem & Kelleyらによる不協和理論の修正がなされ,認知的不協和発生の限定化(Bemに於ては「不協和」概念の排除を主張)とその低減手段の再解釈が論じられた。要約すれば,不協和生起に於て,(1)行動決定に際しての自由,執意(Brehm & Cohen)と(2)行動結果の嫌悪度(Aronson, Collins, Bramel)が主決定因であることが明らかにされた。特に後者が不協和発生に最も重要な因子であることが指摘された。嫌悪的結果の認知時期は不協和の大きさに影響を及ぼすとはいえるが,不協和発生の重要な要因であるとはいい難い。また,BemやKelleyの知見は不協和分析とは多少異質のものと考えられ,不協和効果を説明するためには適切ではないように思われる。さらに,Collinsが不協和は嫌悪的結果の認知によってのみ経験されるという不協和発生条件の明確な規定をしているとはいえ,嫌悪的結果によって生み出された不快さが果たして認知的不協和関係の生起を反映しているか疑問である。今後さらに不協和理論の理論的解明と不協和発生要因を確定するための詳細な研究と分析がなされる必要がある。
- 1975-03-31