言語情報の推測過程におよぼす効果の実験的研究(I)
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概要
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言語材料(動詞のみ)を用いて,評価的次元からポジティブな情報とネガティブな情報による対人関係を記述して示し,認知者(被験者)が推測をする場合,それらの情報を如何にして処理していくか,その推測過程の検討が主として期待インパクト仮説,均衡理論の立場からなされた。大学生47人を対象にしてそれを2グループに分け,情報提示順序の異なった6項目からなるForm 1とForm 2をそれぞれのグループに与えてポジティブな推測(好意度)とネガティブな推測(敵意度)をさせた。その主な結果は次の通りである。(1)同性質の情報量の増加に伴ってその情報と同性質の推測値は増大し,異質の推測値は逆に減少する。その増加,減少傾向は情報量の増加に伴って次第に緩慢になる。(2)ポジティブな情報がネガティブな情報に先行する場合の方がその逆の場合よりも推測変化量は大きい。(3)前提示情報と後提示情報が相反する場合,その不一致な情報がはじめて提示される時の変化量は最大である。(4)ポジティプな情報とネガティプな情報の提示割合が同じであっても,両者の提示量が多い場合の方が少ない場合よりもインパタトは少なく,したがって,推測変化量も少ない。本研究結果は仮説通りの傾向を一応示したが,統計的に有意差を示すに至らない部分が多々にあった。したがって,本研究結果を直ちに一般化することは困難である。本実験における情報としての動詞の抽出の際,観察可能性(Observability)と推測方法(演鐸的か,帰納的か)との交互作用という要因の存在を考慮する必要があったょうに思われる。それは,今後の追研究にゆだね,再検討していきたい。
- 1975-03-31