植物エストロゲンおよび内分泌攪乱物質の精子形成への影響評価に対するDNA : マイクロアレイを用いた判定法の開発
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概要
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植物エストロゲンであるゲニステイン(Gen),合成女性ホルモンであるジエチルスチルベステロール(DES),または容器コーティング剤として用いられるBisphenol A (BPA)をマウス新生任期に投与することによって,生殖能を有する時期での精巣において発現が変化する遺伝子をcDNAマイクロアレイ法を用いて検索した。また同時に従来の精巣機能および精子形成評価を合わせて行った。DESを50μg/mouse/day, Genを1mg/mouse/day,またはBPAを0.2mg/mouse/dayを,生後すぐからICR雄性マウスに5日間皮下投与を行った。3か月後に体重,精子数,精子運動能,精巣重量を測定した。また精巣からRNAを調製し,cDNAマイクロアレイ法にて非投与群に対して発現に差のあるものを検索した。DES投与群において精子数,精子運動能,精巣相対重量は対照群に比して有意に低値を示した。またBPA投与群では精子数,精子運効能が有意に低値を示した。しかしながら,Gen投与群では精子数,精子運動能,精巣相対重量に対照群に比して有意な差は認めなかった。各化学物質曝露によって精巣で発現に差の生じた遺伝子は,マウスcDNAクローン約8800種のうち,DESでは34種,Genでは38種,BPAでは12種が見い出された。これら結果から,内分泌攪乱物質曝露によって発現変化を引き起こす遺伝子をcDNAマイクロアレイ法を用い多数の遺伝子について一挙に解析することができた。Genでは従来の判定法で変化を認めないにも関わらず,発現変化する遺伝子が存在することが明らかとなった。このことからこれらの遺伝子を内分泌攪乱物質曝露のマーカーとして利用することができると考えている。
- 千葉大学の論文
- 2001-06-01
著者
-
櫻井 健一
千葉大学大学院 医学研究院 次世代環境健康学プロジェクト
-
井口 泰泉
岡崎国立共同研究機構統合バイオサイエンスセンター生命環境
-
深田 秀樹
千葉大学大学院医学研究院環境生命医学
-
小宮山 政敏
千葉大学大学院医学研究院環境生命医学
-
足達 哲也
科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業(内分泌かく乱物質研究グループ)
-
櫻井 健一
千葉大学医学部
-
深田 秀樹
深田生命科学研究所
-
小宮山 政敏
千葉大学医学部
-
芝山 孝子
科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業(内分泌かく乱物質研究グループ)
-
井口 泰泉
科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業(内分泌かく乱物質研究グループ)
-
森 千里
科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業(内分泌かく乱物質研究グループ)
-
芝山 孝子
科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業(内分泌かく乱物質研究グループ):千葉大学医学部
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