大阪湾人工島における住戸からの眺望の評価 : 帰納二分割法を用いた好まれる眺望の写真分析と満足度の関係

概要

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1.背景・目的これまでの研究で、海の眺望は居住者の肯定的な評価となり、また住棟の景観は否定的な評価となること、さらにこれらの評価は眺望の景観要素の広がりと距離に関連してることを明らかにしてきた。本論では、居住者にとって好まれる眺望として居住者が住戸から撮影した眺望写真の画像を分析して1,居間からの眺望(写真)の分析と好まれる眺望の景観要素を比較して相違を検討する。2,居間からの眺望で否定的な評価がなされている住棟の眺望景観が、好まれる景観ではどのような状態になっているか。3,好まれる眺望に見られる景観要素のクラスターと眺望の満足度の関連性を調べる。以上のことを研究の目的とした。調査は2000年2月と4月に行われ、南港ポートタウン(NPT)、西宮マリーナパークシティ(NMPC)、六甲アイランドシティ(RIC)の255サンプルについて、眺望の満足度(アンケート調査)、居間からの眺望写真、居住者に好まれる眺望として撮影したポラロイド写真を得た。2.好まれる眺望と居間からの眺望好まれる眺望と居間からの眺望の両者の景観写真に含まれる景観要素を比較したところ、居間からの眺望の約74%に住棟が含まれるが、好まれる眺望では住棟は57%になる。一方、好まれる眺望では地面や中庭が最も多く含まれ(69%)、これらは居間からの眺望では約1/2(33%)になる。他の景観要素では両者の差は大きくない。次に、これらの景観要素をクラスターアナリシス(結合法)を行って、4クラスターを得た。クラスター1は山・市街地・文化・業務施設、クラスター2は海・港湾施設、クラスター3は地面・中庭・植栽、クラスター4は住棟となった。3.住戸からの好まれる眺望と眺望の満足度帰納二分割法(Binary Recursive Partitioning)を用いて上記4クラスターとシンメトリー(好まれる眺望写真と居間からの眺望写真が符合する場合)、距離(眺望が近景であるか遠景であるか)と眺望の満足度の関係を分析した。その結果、シンメトリーの場合、および遠景である場合の方が、そうでない場合よりも満足度の高い分布を示した。次に眺望の満足度には、クラスター2(海・港湾施設)が最も高い説明力を持ち、それに次いでクラスター3(地面・中庭・植栽)が説明力を持つっている。クラスター1(山・市街地・文化・業務施設)とクラスター4(住棟)はほとんど差がないことが明らかになった。眺望の満足度が高い場合は、眺望にクラスター2(海・港湾施設)を含み、さらにクラスター3(地面・中庭・植栽)もしくはクラスター1(山・市街地・文化・業務施設)とクラスター4(住棟)のいずれかの組み合わせである。これらの組合せのうち大半は、クラスター2(海・港湾施設)とクラスター3(地面・中庭・植栽)との組合せであった。次の満足度のレベルでは、クラスター1(山・市街地・文化・業務施設)もしくはクラスター2(海・港湾施設)だけの場合もあるが、クラスター2(海・港湾施設)とクラスター3(地面・中庭・植栽)、クラスター4(住棟)が同時に含まれる場合がほとんどである。満足・不満足どちらでもない場合の眺望では、クラスター3(地面・中庭・植栽)、クラスター4(住棟)のみであること、不満の場合はラスター1(山・市街地・文化・業務施設)とクラスター3(地面・中庭・植栽)のみである。不満の高い場合は、クラスター3(地面・中庭・植栽)のみであることが分かった。4.まとめと考察居間からの眺望と好まれる眺望を比較すると、景観要素のうちネガティブな評価である住棟は、好まれる眺望では大幅に減少するが、ポジティブな評価である海はほとんど増加しない。つまり海の景観要素は居住者の意志で取り込むことが出来ない。地面や中庭が増加するのは、住棟を眺望から避けてアングルを急な角度に変えたためである。これらのことから、眺望の景観要素と住棟の関係が明らかになった。次に、眺望・景観の構成要素のクラスターと眺望の満足度には法則性が在ることが分かった。つまり、住戸からの眺望・景観が近くの地面・中庭・植栽のみの場合に高い不満足が在り、また、海・港湾施設と地面や植栽の組合せの場合に、眺望の満足度は最も高くなることを明らかにした。また、帰納二分割法の最初の分割では、クラスター2(海・港湾施設)を分割ルールとなっていることから、好まれる眺望に、海・港湾施設の景観要素を含む眺望が満足度に最も影響力のあることが分かり、先行研究と良く符合することが分かった。
2003-01-30

大阪湾人工島における住戸からの眺望の評価 : 帰納二分割法を用いた好まれる眺望の写真分析と満足度の関係

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