血管平滑筋細胞における成長ホルモン投与による遺伝子発現の変化 : differential display 法を用いた検討
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概要
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最近, 成長ホルモン (GH) が動脈硬化に影響を及ぼすことが報告されているが, そのメカニズムについてはよく知られていない。動脈硬化において血管平滑筋が重要な役割を果たすことはよく知られているため, 我々は血管平滑筋細胞に成長ホルモンを加え, それにより変化する遺伝子群を differential display 法を用いて検討した。その結果, cytochrome oxidase subunit II/III や prystanoyl Co-A oxides eなどのmRNAがGH投与により増加し, ADAMST-1 (a disintegrin and metalloprotease with thrombospondin type 1 repeat) などのmRNAが減少していることが観察された。ミトコンドリア遺伝子の転写, 複製を制御しているのは mitochondrial transcription factor 1 (mtTF1) という転写因子であり, cytochrome oxidase subunit I/IIIのmRNAが増加することから, 我々はGHが直接mt TF1の遺伝子レベルを制御しているのではないかと考え, 定量PCRを使いその発現量を測定したところ, GH投与によりmtTF1のmRNAが用量依存性に増加し, JAK2阻害剤であるAG490投与によりコントロールレベルまで抑制されることが明らかとなった。このことより, 血管平滑筋において成長ホルモンは, JAK2シグナリングを介してmt TF1を変化させ, ミトコンドリア遺伝子の転写, 複製を制御している可能性が示された。
- 神戸大学の論文
- 2003-03-31
著者
-
千原 和夫
神戸大学大学院医学系研究科 内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科学
-
吉岡 嗣朗
神戸大学大学院 医学系研究科応用分子医学講座内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科
-
千原 和夫
神戸大学大学院 医学系研究科 応用分子医学講座内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科
-
千原 和夫
神戸大学 医系研究 応用分子医
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