著明なインスリン抵抗性を呈した糖尿病患者におけるインスリン作用障害発症機構の解析
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概要
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著明なインスリン抵抗性を呈する糖尿病患者において, インスリン情報伝達機構の障害部位を解析した。患者赤血球並びに生検皮膚組織からの培養線維芽細胞のインスリン受容体, I型インスリン様成長因子 (insulin-like growth factor-I, IGF-I) 受容体のチロシンリン酸化能およびフォスフォイノシチド3-キナーゼ (phosphoinositide 3-kinase, PI 3-キナーゼ) には異常はみられなかったが, 患者皮膚線維芽細胞のIGF-I刺激後の抗フォスフォチロシン抗体及び抗IRS-1 (insulin receptor substrate-1) 抗体免疫沈降分画中のPI 3-キナーゼ活性は正常の約60%に低下していた。さらにPI 3-キナーゼの下流のエフェクターであるAkt/PKBの活性も正常対照に比して約60%の低下を認めた。患者皮膚線維芽細胞ではIGF-I刺激後の抗フォスフォチロシン抗体分画中のIRS-1と考えられる185kDaの蛋白のリン酸化が著明に障害されていたが, IRS-1のmRNA及び蛋白レベルでの発現は正常対照に比して差はなかった。genomic DNA をテンプレートにした PCR・subcloning 法により患者IRS-1遺伝子の全長をシークエンスしたところ, IRS-1の遺伝子には既報のGly972Argの多型性以外には異常はみられなかった。さらに抗IRS-2抗体免疫沈降分画中のPI 3-キナーゼ活性も正常の約60%に低下していた。以上の結果より, IRS蛋白のチロシンリン酸化の障害に起因するPI 3-キナーゼ活性化の異常が本症例におけるインスリン抵抗性の原因である可能性が示唆された。
- 2000-12-20
著者
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