表面型大腸腫瘍におけるDCC遺伝子コドン201の多型性に関する検討
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概要
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大腸においても表面型腺腫・癌が多く発見されるようになり, 分子生物学的にはK-ras遺伝子変異が極めて低率であることが明らかにされ, その形態像の特異性とともに従来のポリープ・癌相関とは異なる発育進展機序が想定されている。大腸癌の発生・進展に関与する, 第18染色体長腕上に存在する癌抑制遺伝子の候補遺伝子とされている DCC (Deleted in Colorectal Carcinoma) 遺伝子について, 私達はコドン201に (Arg/Gly) 多型性が存在し, 進行大腸癌と201 (Gly) 型が相関することを見出した。今回, DCC遺伝子コドン201 (Arg/Gly)多型性について表面型と隆起型腫瘍とを比較検討した。腫瘍高が正常粘膜以下のもの (平坦・陥凹型) を表面型とし, 組織学的には軽度異型群 (以下 low 群), 粘膜内癌を含む高度異型群 (以下 high 群), 粘膜下層浸潤癌 (以下sm癌) に分類した。末梢血あるいは正常大腸粘膜でのDCC遺伝子コドン201 (Gly) 型の頻度は, 対照 (全大腸内視鏡検査および家族歴で大腸腫瘍性病変を認めない例) 17% (5/30例), 隆起型腫瘍を有する例では 1ow 群18% (3/17例), high 群49% (17/35例), sm癌52% (15/29例), および進行癌例では49% (36/74例) であった。表面型腫瘍を有する例では, high 群64% (9/14例), およびsm癌54% (7/13例) であり, 隆起型 high 群, sm癌および進行癌と同様に高率であったが, 表面型 low 群では67% (6/9例) と, 対照 (17%) および隆起型 low 群 (18%) に比して有意に高率であった。片対立遺伝子の欠失 (LOH) を認めた10例を除いて, コドン201の多型性は正常組織と腫瘍組織とで同一結果であった。腫瘍組織でLOHを認めた10例のうち9例はコドン201 (Arg) アレルが欠失し, (Gly) アレルが残存していた。以上より, DCC遺伝子コドン201 (Gly) 型は大腸癌の有用な genetic marker であるとともに, 表面型腫瘍にも関連していることが示唆された。
- 神戸大学の論文
- 1997-12-01
著者
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