マウスポリコーム群遺伝子mel-18の機能 : 胸腺器官形成過程における役割
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概要
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マウスmel-18は,ショウジョウバエの形態形成,特に前後輪形成に関与するポリコームグループ遺伝子posterior sex combs (Psc)と高い相同性を持つ。mel-18の生体内機能を解析する目的で遺伝子相同組み換え法を用い,mel-18欠損マウスを作製した。その結果,中軸骨格系に後方化の変異を呈する他,下部腸管の病的肥厚とリンパ系組織の形成異常が観察された。このマウスを用いて,胸腺形成過程にどのような機能を果たしているかを解析した。mel-18欠損マウスの胸腺は,著明な発育不全と胸腺細胞の増殖異常を認めた。特に生後4週齢マウスにおける胸腺においては,胸腺細胞数は野生型の1/100以下に減少し,CD4/CD8によるフローサイトメトリー解析では,欠損型では99%以上がCD4/CD8二重陰性胸腺細胞にとどまっていた。胎仔胸腺器官培養の手法を用い,欠損型と野生型の胸腺細胞と胸腺上皮の入れ換え実験を行った。欠損型胸腺細胞は,野生型胸腺上皮内の環境では増殖,分化とも正常であったが,野生型胸腺細胞は,欠損型胸腺上皮内では増殖,分化ともみられなかった。胸腺上皮の機能を解析するため,ヌードマウスの腎被膜下に胎仔胸腺を移植,ヌードマウス由来の再構築した胸腺細胞を解析した。欠損型胸腺上皮内では,胸腺細胞のCD4/CD8の分化は正常にみられたが,細胞数は,コントロールに比較し,1/10以下であった。以上の結果からmel-18欠損マウスの胸腺は,発育不全と胸腺細胞数の減少と分化の異常を認め,その胸腺細胞数減少の原因は,胸腺上皮の機能異常が原因であることが示唆された。
- 千葉大学の論文
- 1999-06-01
著者
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