小肝細胞癌におけるウイルスマーカーと背景因子からみた臨床像ならびに予後に関する検討 : HBV陽性肝細胞癌とHCV陽性肝細胞癌の比較
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概要
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小肝細胞癌の臨床像および予後をウイルスマーカー別,背景因子別に検討した。対象は肝細胞癌253例で,腫瘍径3cm以下の小肝細胞癌は176例であった。全症例の平均年齢は58.8±7.6歳であり,男性218例,女性35例であった。HBs抗原をRIA法で測定し,陽性例をHBV陽性とした。HCV抗体が第2世代抗体で陽性,またはPCR法でHCV-RNAが検出された場合をHCV陽性とした。HBV,HCV両者陽性(BC群)は6例,HBV単独陽性(B群)は26例,HCV単独陽性(C群)は199例,HBV,HCV両者陰性(NBNC群)は22例であった。B群とC群の間には診断時の臨床像,背景因子に違いがみられた。B群はC群に比べて,診断時の年齢が若く,腫瘍径の大きく,並存する肝障害の軽い症例が多かった。また小肝細胞癌に限定した検討でも,AFP値が20ng/ml以下,診断時に単発腫瘤である割合がB群はC群より多かった。男性例と女性例では背景因子に違いがみられた。男性は女性に比べて,飲酒歴,覚醒剤歴,刺青を有する例が多かったが,輸血例の割合は女性の方が多かった。HCVの感染機会としての覚醒剤歴,刺青は男性例および飲酒歴と相関しており,既往歴としての聴取が重要であると考えられた。また覚醒剤歴,刺青を有する例は輸血例と比べて感染機会から癌診断までの期間が長かった。Coxの比例ハザード・モデルを用い,小肝細胞癌の予後の検討を行ったところ,B群および並存肝障害高度例が予後不良,B群および診断時多発例が再発の高危険群であった。B群とC群.ではその臨床像ならびに予後が大きく異なっている事が明らかとなった。
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