同種骨髄移植後の血小板数の回復遅延に関する臨床的研究
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概要
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1986年6月から1996年3月まで同種骨髄移植を施行した76例を対象とし,同種骨髄移植後の血小板数の回復遅延とそれに関与する因子について検討を行った。移植後60日を経過後,血小板数が10×10^4/μlに満たない症例を血小板数の回復遅延群とした。回復遅延群の頻度は25/76(33%)であり,生存率は非遅延群に比べ,遅延群において有意に低く,5年生存率は前者で60%,後者で約35%と後者で不良であった(P<0.05)。臨床背景として,移植時の年齢30歳以上,再移植例,移植細胞数3.0×10^8/kg未満の症例,grade III以上の重症の急性移植片対宿主反応病(GVHD)合併例で,それぞれ対象に比較して有意に血小板数の回復遅延が見られた(P<0.05)。また血小板数の回復遅延例(3例)と非遅延例(3例)について,移植前後の血中thrombopoietin (TPO)を検討すると,移植後全例で血中TPOは高値を示し,非遅延例では血小板数の回復につれて血清中のTPOは低下しほぼ正常範囲まで低下したが,回復遅延例では高値が持続したことから,血小板数の回復遅延例では血中TPOの産生は障害されておらず,むしろ亢進していると考えられた。ドナー血小板に対する同種抗体陽性例では血小板回復が有意に遷延していた(P<0.05)。以上より,同種骨髄移植後の血小板数の回復遅延例の予後は不良であることが明らかとなり,その背景因子として,年齢,移植回数,移植細胞数およびドナー血小板に対する同種抗体が関与することが明らかになった。
- 1997-06-01
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