Menkes病の一剖検例 : 病理形態学的ならびに化学的解析
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概要
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進行性精神運動発達退行,痙攣を主症状とする1才8カ月男児を剖検する機会を得,病理学的及び種々の化学的検索を行なった。肉眼的に全身の臓器外中小動脈の螺旋状屈曲蛇行,脳の萎縮, cystic hygroma の形成等があった。組織学的には大動脈は弾力線維が発育不全で顆粒状になっており,電顕では実験的銅欠乏症と同じ弾力線維の不完全な形成像があった。脳動脈の連続切片で内弾力板の断裂,形成不全,内膜肥厚等を認めた。化学的には血清銅及びセルロプラスミン値及び銅値が肝で極端な低下,腎・脾で上昇していた。大動脈elastinのアミノ酸分析でlysine の著明な増加を示し,組織collagen量は低値を示した。以上より血管屈曲に関して次のように考える。銅代謝異常による銅欠乏民より,含銅酵素のlysyl oxidaseの働きが障害され. lysyl基からdesmosineへの合成がうまくいかず, elastinの形成不全が起こる。elastinの形成不全のため,弾力板は弱く,動脈は内圧に耐えられず, jet流により一部が損傷されて,ここを中心に屈曲し,その結果起こるhemodynamicな変化が次の屈曲を引き起こすというにして特徴的な螺旋状屈曲蛇行をきたすのであろう。Menkes kinky hair diseaseは特徴的な毛髪異常がその重要な臨床症状であるが,本症例にはそのような毛髪異常は認められなかった。しかし,銅代謝異常に基づく結合織疾患であるという疾病の本質に差はないものとみて,本症例をMenkes kinky hair diseaseと考えた。
- 神戸大学の論文