視覚的干渉課題を用いた運動技能の習熟段階の検討
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概要
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本研究の目的は技能の習熟段階を特定するための手段として, 視覚的干渉課題を用いた方法の妥当性を検討することであった。学習初期には視覚的イメージが課題遂行に重要な役割を果たすために, 動作遂行時に視覚的干渉を与えるとパフォーマンスは低下するが, 技能の習熟に伴い動作が自動化すると, 干渉の影響を受けなくなることが考えられる。したがって視覚的干渉を与えた場合と与えなかった場合のパフォーマンスを概観することによって, 動作の習熟段階を把握することが可能となろう。7名の男子被験者が実験に参加した。課題は直径205mmの円を1.2秒で正確に描くことであった。被験者はまず練習盤を用いた身体拘束練習を15試行行った。その後練習盤なしで6試行を行い, 各試行後にKRが与えられた。6試行は視覚的干渉を与えた条件 (VI) 3試行と与えない条件 (NI) 3試行がランダムな順序で行われた。視覚的干渉としては無意味綴りが呈示され, 各試行後に綴りを言語報告するよう指示された。以上を1セットとして15セット, 翌日再び15セットを行った。依存変数は基準円に対する描写円の逸脱面積の絶対誤差 (AAE) 及び恒常誤差 (ACE), 基準円の円周に対する描写軌跡の恒常誤差 (LCE), 目標時間に対する動作時間誤差 (MTE) であった。各指標毎に7名分の平均値を分析した結果, いくつかの指標においてVI条件, NI条件それぞれに学習効果が認められたが, 両条件間のパフォーマンスの差の減少はいずれも有意でなかった。これは被験者の個人間差が大きかったためである。そのため, 各被験者毎にパフォーマンス曲線を描き学習効果を分析した。その結果2日間の練習を通して誤差が減少し安定すると同時に, VI-NI条件のパフォーマンスに接近が認められる被験者もいた。全体を通して, 視覚的干渉を与えた課題のパフォーマンスから, 動作の習熟段階を検討することが可能であることが示唆された。問題点としては今回の実験では完全な動作の自動化段階に達するには, 練習試行数が不足していたことが考えられ, 今後より長期的に練習を行った場合のパフォーマンスを追跡してみる必要性があげられた。
- 中京大学の論文
- 1994-11-09
著者
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