Mark Strand詩における自己の不在 : Blizzard of One
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
詩集Blizzard of One (1998)は、"Untitled"から始まる。その中には別の詩が含まれるものの、この詩自体には題名が無い。なぜ、Mark Strandは、このような無題の詩から始めるのだろうか。それは,ストランドが,自己の不在性について探究していることに関わっている,と筆者には思われる。本論は,"Untitled"への疑問をきっかけに,3つの視点からBlizzard of Oneに見られるストランド詩の変化に着目する。まず,"Untitled"と同様に,過去に関連する6篇の詩を取り上げる。これらの詩は,過去の亡霊に囚われながらも,闇夜から逃れて光を目指そうとする一面がある。次に,主題の鍵を握る4篇を扱う。この中で詩人は,過去を嘆いているだけではない。失われた時間の意義を再考して現在に生かし,未来へ繋げる可能性を見出そうとしている。過去のストランド詩には見られなかった一面だ。最後に,初期の代表詩の一つ"Keeping Things Whole"との比較を試みる。「自己の不在性」という主題について,ストランドの捉え方に変化が見られる。空虚な自己の存在を受け入れ,新たな自己を見詰めなおそうとする詩人の姿がある。それが,この詩集に見られるストランドの変化だと言えよう。
- 2005-03-31
著者
関連論文
- The Waste Landにおけるヒヤシンス挿話での沈黙
- ブリザードは起きるのか? : Mark Strand の Blizzard of One
- Mark Strand詩における自己の不在 : Blizzard of One
- T. S. Eliotの未発表詩における夜明けの闇 : Inventions of the March Hare(英米の言語と文化)
- 記憶の探究 : Rhapsody on a Windy Night
- 反復イメージの変容 : Four Quartetsと没個性詩論
- 語り手の内面風景としてのThe Waste Land
- 語り手の内面風景としてのThe Waste Land