卵巣腫瘍におけるCA19-9の術後減少パターンについての考察
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概要
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目的:腫瘍マーカーCA19-9のsialyl Lewis aという構造を有する点に注目し,卵巣腫瘍における術後の減少パターンについてLewis (Le)式血液型を考慮し検討した。対象および方法:健康で膵胆管系に異常がない女性96例を正常群としてcut off値を求め,次に良性卵巣腫瘍53例についてLe式血液型および術前,術後のCA19-9を測定し血液型をLe a,Le b,Le negative (neg.)と分類した。また術後経過の判明している22例についてLe式血液型ごとに減少パターンを検討し,さらに,免疫組織染色によりCA19-9の局在を検討した。結果:1)正常群におけるCA19-9値は,Le a群(n=17)29.5±9.9u/ml,Le b群(n=65)10.3±6.9u/ml,Le neg.群(n=14)0u/mlであった。また,Le a群の17例中4例に,CA19-9高値がみられた。2)術前〜術後1週のCA19-9減少速度についてみると,Le b群がLe a群より有意に大きかった。また,Le b群のCA19-9減少速度についてみると,術前〜術後1週のほうが術後1週〜術後4週より有意に大きかった。すなわち,Le b群は,Le a群より術後,速やかに低下しているが,Le b群のCA19-9減少速度は,術後1週以降,低下していることが認められた。本研究によりLe a群とLe b群の術後CA19-9は,各々異なる減少パターンを有していることが明らかとなった。3)卵巣腫瘍細胞のCA19-9は,細胞質に局在し血中に分泌されると考えられた。Le a群では,卵巣腫瘍がないにもかかわらず,CA19-9高値を呈する症例があり,Le式血液型の確認が必要である。Le b群の術後CA19-9値は,Le a群より速やかに正常範囲内に低下するので,腫瘍マーカーとして有用である。結論:1)卵巣腫瘍切除後,Le b群のCA19-9は,Le a群に比べ速やかに減少したが術後1週以降,その減少速度は低下した。2)Le a群およびLe b群の術後CA19-9は各々,特異的な減少パターンを呈していた。3)術後CA19-9を経過観察する際には,Le式血液型の確認が必要である。
- 東邦大学の論文
- 2005-07-01
著者
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