「けなげ」の多義性 : ジェンダーから見る「ネル」再話(II.人文・社会科学系)
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概要
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児童文学の翻訳・再話における「子ども」観の反映として、「けなげ」という概念に注目する。一方で「いたいけ、いじらしい、あわれ」といった心情に根ざし、他方「気高さ、強さ、勇気」といった行動を伴うようなこの語は、児童文学の中で多様な働きをしている。その概念が「少女」主人公と結びついた翻訳・再話における例として、ここではディケンズ『骨董屋』に基づく「ネル」再話をとりあげ、とくに三人の再話者の酢せいを検討対象とした。感傷性から離れた方向への再話化の努力がそれぞれに見られるが、反面、それが同時に「けなげ」な「少女」の造型を規定しがちでもあること、作品の周辺情報が享受者に影響を与える可能性もあることを指摘し、またドストエフスキー『虐げられた人々』に基づく別の「ネリー」再話との関連性についても研究の可能性を示唆した。
- 2004-02-28
著者
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