Some Data Examination on the cool Summer Weather Year of the 2003 and making clear its regional Diversities by tracing the daily Temperature Transition and by measuring Deviation from the normal Summer on the home 9 Weather Stations
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概要
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2003年はしばらくぶりの冷夏になった。冷夏は異常というより, むしろ間をおいては必ず起きる現象と筆者は考える。その冷夏は日本を一様に低温にするのではなく, 地域差を伴なう。それほどひどい被害にならずにすんだ日本海側に比べ, 関東東部の水戸も含む東部東北地方の冷害がひどかったのは周知のところである。筆者は9気象台を選び, それぞれの日最高気温の変化を追跡した。ついで平年値との負の差の累計を求めた。日照時間の平年値の地域差を極端にすると, 上記の平年値との負の差の累計の形が現れるようである。日本海側の代表に上越気象台を選び, 低温の顕著な五つの時期について天気図を調べ気団の動きを確かめた。2003年は例年の主役, ヤマセを吹かせるオホーツク高気圧が強く持続期間も長かったが, 大陸生まれの小さな高気圧の移動経路がかなり北に偏り, 寒気を滞留させたのも低温の重要な要因であった。台風は高温の海水域が広がると育ち, 莫大な量の大気を上空10km近くまで上昇させ, 地上の高気圧を強めるが, 2003年7月に日本を襲った台風が皆無であったのも注目される。梅雨前線下に入れば上越といえど通常の夏でも気温が下がる。日本海側はむろんヤマセの風下だが, オホーツク高気圧の張出しのない時日本海を通過した寒冷高・低気圧のもたらす南北方向の風に, 日本海側3地点は正面でなく斜めに対面する地勢であるのも注意すべき点だろう。以上が上越のデータの吟味の結果である。水戸の低温も同時に吟味したが, オホーツク高気圧は無論のこと, 日本海を移動して太平洋に抜けた高気圧も水戸へは低温の北東風を送った。梅雨前線上を東進する低気圧はオホーツク高気圧のブロッキング作用を受け水戸付近に停滞しこれも悪天と低温をもたらした。上越と水戸の気温変化の比較から, 水戸の気温変化は振幅が大で, ある高さの気温の持続がしばしば中断される様子が判明した。これは気温持続の不安定と呼ぶことができるであろう。松本や大町は本州中央高地の盆地内にあり, 海洋気団の動きを直接には受けないが, 高地東端の軽井沢は水戸に類似する。軽井沢と札幌を比べると, 軽井沢のはるか南の位置にもかかわらず, 上越に対する水戸と同様に気温の持続の点で軽井沢は札幌よりも不安定であった。2003年と同様に冷夏の時の軽井沢は農業には厳しい環境であって, その反復は穀物農業を早くから断念させ, それが軽井沢に観光地への道を歩ませたと考えることもできるだろう。
- 信州大学の論文
- 2004-03-15
著者
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