中国西北部の水資源配置と砂漠化対策 : 甘粛省河西回廊の考察と黄土高原論(小林榮吾・齋藤道愛・森島賢教授定年退任記念号)
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概要
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本稿は中国西北部にある甘粛省河西回廊論と陜西省黄土高原論について、西北部の水資源の合理的配置と砂漠化対策を追求した抄訳を含む論考である。「改革・開放」政策実施以来、高度経済成長にともなって中国の生態系は驚くべき速度で劣化し、環境や生態系の破壊が経済発展を制約する原因となってきた。これに対して、中国は2000年から内陸開発を目指す「西部大開発」戦略が定義したそのプロジェクトには、多くの根本問題がある。最も重要なのは、水資源問題である。中国の水資源総量は約2.8億兆m^3で世界第6位だが、人口一人あたりの水資源量は約2,200m^3世界平均の4分の1程度の水貧国である。将来的には更に低下するとみられ、それも見越した水不足への緊急の取り組みが必要となっている。中でも西北内陸地域の河川流域面積に占める水資源量は僅少であり、年間降水量も少ない。他方、南部では水資源量は豊富であるが、森林伐採の影響や基礎インフラの能力低下により洪水災害が頻発している。この水資源分布の不均一も大きな地域構造問題である。この西北部の状況で水資源とその開発、利用、配置、節約、保護、管理などを解決することが焦の課題となっている。この中で人々の生存と健康に不可欠な公共財といえる重要な水資源について、西北部地域を中心に、生態環境の破壊と悪化の原因を考察する。開発経済学の基本テーマ「社会的共通資本」(宇沢弘文)形成の視点から、水危機に直面する河西回廊と黄土高原を焦点に、節水と水資源保護、水資源の最適配置と砂漠化防止を解明した。
- 2005-03-20
著者
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