地域研究のための用語・鍵語 : 『地域研究のための二ヶ国語による通文化レキシコン』の補足説明・議論 (No.2)
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概要
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私のレキシコンは「研究分野概要の表示」(第1部) と「辞書形式のレキシコン」(第2部) からなり、第二部は見出し語数約3千、第2次収録語 (第6次までを含んで) を合わせると約1.5万に及ぶ語彙を収録している。まずこれら収録語を第1部に示した類、部門、亜部門との関連から論ずる。新 (日本語) 訳語だけでなく新合成英語用語、新造英語をも提案している。そしてまた、私の仮説、新知見、主張を示す用語、分類 (狭義語NT)、用語階層 (TH) をも提案し、これらを中心に議論を展開している。見出し語を数えあげてまず驚くことは、クラスII (第2類) 人間領域ことに要因、クラスIII (第3類) 自然過程とくに有機領域に多いことである。私は長年、地理学にこだわらずに調査研究してきたつもりである。しかし、よくみるとそれらは人文地理学的方法とのかかわりの多い用語であることが分る。行動地理学の用語、自然的背景とくに地貌、有機領域の用語が多いことが知られ、私の研究はやはり地理学的あり、広義的には地域研究であったと改めてうなずかされる。農業地理、集落地理、文化地理の用語が多いのは、私の研究の反映として尤なことである。第2次収録語 (第2次、第3次以下全部を含む) 20以上を含み用語組織が整備されているものにだけをみる (第1図)と、第1位は農業 (15語)、第2位生活 (6語) となっており、十分納得できる。最も多段階に用語組織が整備充実している用語のなかに、牛 (cattle)、牝牛など放牧・山村関係のものが多い。私は日本の放牧山村の調査研究に取り組み、野草地放牧、耕牧輪換、刈跡放牧、作付強制、輪換放牧、薪炭林、村落共同体、蔓牛、系統牛、牧童、牛取引、牛小作などを鍵語として研究をすすめた。米、潅漑についても用語組織に注意を払った。そして19世紀から20世紀への移行時に、技術的・社会経済的変化・発展があり、小農民農業は資本主義的・個人主義的農業へと発展していったことを関連用語を示しながら論述している。もう一つ、新用語を提案収録し私の主張を全面に押し出したものに、農家区分がある。日本の官庁統計が採用している専業農家・兼業農家とその内訳に対して、次のごとく提案する。専業農家を大規模経済農家と低位雇用農家に二分し、兼業農家を農主兼業、農副兼業の外に、趣味農業家を入れて3つに分けることの必要性を強調する。これを見て分るように、用語の下位概念、狭義語 (NT) として何を採り入れるかは、レキシコン編纂者の見識が問われるところといえよう。魚・漁業用語 ; コミュニティ・村落用語 ; 近代化用語などの節 (本論文の) において、私が研究過程において重用した鍵語を提示し、批判を仰ぐことにしている。講義において、折にふれ、機会を捉えて、私は時局の論点と季節の課題を学生とともに考えることにしてる。それらについての用語的枠組、鍵語を示した。そしてまた、人生観・世界観について私が大切にしている用語を示し、私個人の処世・生活の関係の術語を示して結んでいる。このように、二ケ国語思考でレキシコン整備に自己実現の歓びを見出している次第である。さらなるご批正、ご協力を期待してやみません。
- 1990-11-25
著者
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