企業会計の機能と開示偏重の問題点 (経済学部50周年記念号)
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概要
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グローバル化した資本主義に対応し、統一的で比較可能な国際会計基準による各国の会計基準の調和化が進められている。しかし、この会計基準の大変革の中で、証券市場における投資意思決定に有用な情報として、資産負債アプローチに基づき、金融商品の時価評価、固定資産の減損会計、評価損益と実現損益の混在する包括利益の業績報告書等を中心とした連結財務諸表の開示への動向が見られる。これらの時価情報は公正価値として、市場価格がある場合には市場価格を、市場価格がない場合には客観性に疑問のある企業の生み出す将来キャッシュ・フローの見積もりに基づく割引現在価値等を用いることになっている。小論では、歴史的視野から企業会計の基本機能を再確認し、最近の金融商品の時価評価、減損会計、包括的業績報告書を取上げて検討し、意思決定に有用な情報開示への偏重が、目的適合性と適時性のために信頼性と客観性とを軽んじており、企業会計への信頼性を失わせる恐れのあるという問題を指摘し、時価情報の開示と損益計算とを切り離した財務諸表への道を示唆している。
- 北海道大学の論文
- 2003-12-16