職業専門家としての監査人の責任の拡張
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概要
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本稿は、監査人の責任の拡張について、監査人が考える責任と監査人に期待される責任の双方の観点から分析したものである。その結果、責任負担範囲は、1933/34年の証券取引諸法の導入によって拡張されたことが判明した。任意監査下では、監査人は契約当事者であるクライアントに対して責任を負う。証明あるいは意見表明のために必要な監査手続を実施することが監査人の責任であるが、第三者が監査人にかかる責任の履行を問うには限界があった。証券取引諸法の制定により法定財務諸表監査が行われると、新たに第三者たる財務諸表利用者への責任として、経営者不正の発見責任が生じた。SEC や財務諸表利用者は監査人に経営者不正の発見を期待したが、監査人は1988年まで経営者不正の発見を主目的と位置づけなかった。監査人の経営者不正の発見責任の放棄部分は、1960年代までは財務諸表の利用者が投資損失として被ってきた。1960年代後半以降は、監査人の法的責任の遂行、すなわち損害賠償によってまかなわれているが、責任の拡張は21世紀になっても続いている。
- 北海道大学の論文
- 2004-03-09