日本企業における国際人的資源管理の変革 : 「統合-現地適応」の両立に向けて
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概要
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今日の多国籍企業には「グローバル統合」と「現地適応」の両立を可能にする組織能力が求められている。こうした中、本稿では「統合-現地適応」論を分析のフレームワークとして、日本企業の国際人的資源管理の課題を明らかにするとともに、日本を代表する多国籍企業であるトヨタ自動車と松下電器産業の事例研究からインプリケーションを導出したい。日本企業の国際人的資源管理は、欧米企業に比べ海外子会社トップの「現地化」が進まず、それが現地のホワイトカラー人材の「採用・定着」("A&R";Attract&Retain)や「モチベーション」にマイナスの影響を与えていると考えられる。また、現地人を包含した「社会化」が不十分で、現地人は日本人と異なる人的資源管理の体系の中に置かれるなど、両者は「規範的・制度的」に分断されている。すなわち、日本企業の国際人的資源管理は「低・統合、低・現地適応」の特質を有していると言える。そして、こうした国際人的資源管理は「本社-子会社」間および子会社間の国境を越えた協働に必要な協力精神の涵養を阻害するとともに、有能人材の"A&R"や人材活用のグローバル最適化を困難なものとし、「世界的学習能力」構築の妨げとなるであろう。こうした状況下、トヨタ自動車と松下電器産業は「統合-現地適応」の両立に向けた国際人的資源管理の変革に取り組んでいる。両社の事例からは、(1)職務を基軸にした「統合-現地適応」の両立、(2)国境を越えた「社会化」による「規範的統合」の強化、(3)「グローバル人事制度」の構築を通じた「制度的統合」の実現、(4)「規範的統合」と「制度的統合」の連動、といった事項がインプリケーションとして導き出せよう。
- 2005-09-30
著者
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