言語記憶に及ぼす文章化経験の効果
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概要
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本研究は,刺激語と反応語を含む文章化経験が,聴覚障害児の言語学習に対してどのような継時的効果を及ぼすかを検討することを研究の目的としている。実験では,刺激語と反応語を含む文章を作成する条件(作文群),同じく両語を含む短い文章を読む条件(短文読み群),文章化せずに単語の形のままで読む条件(単語読み群),なんの先行経験も受けない条件(統制群)の4群を設定し,後続の対連合学習の成績(正反応数)を比較した。また,同じ実験を健聴児にも実施して,その結果を比較検討した。その結果,聴覚障害児では,作文群が最も良い成績を示し,短文読み群がこれに続き,単語読み群・統制群がほぼ同じでこれにつぐ成績を示した。健聴児に関しても同様の傾向が見られた。作文群において作成された作文は,聴覚障害児に誤文の割合が高く,健聴児は少なかったが,対連合学習の平均正反応散は,画技験児群ともに満点に近い高得点を示した。以上の実験結果から次のことが考察された。対連合学習の剌激語と反応語を文章化するごとによって,意味的条件づけが成立し,条件づけられた意味反応が刺激語と反応語の連合を媒介するというととが推測された。訳文で意味的・文法的な基準と整合していない作文でも,被験児自身の興味や言語習慣や過去経験に基づいて文章化させた場合に,条件づけられた意味反応がより強力な媒介効果を示すと考えられる。このことは,聴覚障害児と健聴児に共通した有効な方略があることを示しており,文章化経験が言語記憶に効果的な役割を果たしていることを,聴覚障害児の言語学習過程に生かしてゆくことの必要性を示唆していると言える。
- 鹿児島国際大学の論文
- 1983-12-15
著者
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