伊豆半島で採集されたモジゴケ科地衣について
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概要
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1. Graphis cognata MULL. ARG. 子器が地衣体上に大きく突出する種として, 日木では本種と G. paral-lela があった。この両種は胞子の大きさによって区別されていたが, 此度これら両基準標本の胞子をはじめ他の形質についても調べたが, 有意な差はないことがわかり, 同一種と断定した。また, 子器がまがりくねる G. anfractuosa が伊豆から報告されたがこれら伊豆産の標本はすべて G. cognata と一致した。今後 G. anfractuosa として日本から報告された標本についても再検討する必要がある。本種は日本固有種で低山から亜高山にかけて広く分布している。2. Graphis handelii ZAHLBR. 本種は熱帯産の種の G. guimarana, G. latibasa, G. tenellula など, 子器の下部が開き, 胞子が 20∿40μm の長さで, 地衣酸として, ノルスチクチン酸をもつものと非常によくにている。今後これら腫がシノニムの関係にあるかどうかが検討される必要がある。3. Graphis proserpens VAIN. 子器の上部に溝状のすじをもつ種で熱帯から日本の温帯地方にまで分布している。4. Graphis rikuzensis (VAIN) M. NAKAN. 本種は外見上 G. scripta に似るが, 果殻の下部が淡褐色にるなことによって区別されている。日本固有種で低山に多い。5. Graphis tenella ACH. 本種は G. scripta に似ている種であるが, 子器が細いことによって区別されている。6. Phaeographis asteriformis (ZAHLBR) M. NAKAN. 本種は日本各地の低山に多く分布するにもかかわらず, これ迄伊豆から報告がなかったが, 今回本種の存在が明らかになった。 Phaeographis dendritica と酷似するが, ノルスチクチン酸を欠くことによって区別されている。7. Phaeographis exaltata (MONT. et V. D. BOSCH) MULL. ARG. 本種は子器が円形になったり, 細長くなったりするが, 果殻がよく発達し, 子器が大型になるので, 他の日本産の Phaeographis 属と容易に区別できる。また地衣体表前に多くの粉子器をもち, それがこわれて白い斑点状にみえる標本が天城山から採集された。8. Graphina inabensis (VAIN.) ZAHLBR. 本種の子器は地衣体上の単なるわれ目状にみえる。わが国の Graphina 属の中で最も分布の広い種である。9. Graphina undulata MULL. ARG. 本種は小笠原産の Graphina instabilis と酷似した子器をもっている。伊豆半島でははじめての報告である。
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