狭い幅の系信頼度
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概要
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1序 多数の破壊モードを含む系の破壊確率の正確な推定は,一般に困難である.そのために,実用上,信頼度の近似点推定や区間推定が行われている.並列系の信頼度の有効な区間推定式は,著者等の知る限り,今迄の所存在しない.直列系の区間推定式としては,Ditlevsenの2次式,Ramachandran,Fengの3次式,およびGreigの高次式がある.これらは総て相関係数に無関係に成立するので,無条件の区間推定式と呼ぶことにする.本論では,並列系の高次式と一般系に対する相関を考慮した区間推定式を導いて,推定幅を狭める.2既存法 2.1並列系 破壊確率の無条件の1次区間は,(5)式で表される.基本破壊モードの相関係数が総て正の場合は,(6)式になる.相関を考慮しているので,条件付き区間と呼ぶことにする.2.2直列系 破壊確率の無条件の(1〜3)次区間は,(8),(14)および(15)式で表される.(16)式は,正の相関に対する1次区間である.3提案法 一般系の破壊は,基本破壊事象の積の和で表される.この和事象は,排反な積事象の和に書き直すことができる.従って,系信頼度の評価には,積事象の確率計算が必要不可欠である.破壊は,共通の原因により起こることが多い.その場合の基本破壊モード間の相関係数は,正となる.本論では,正の相関係数を持つ系の信頼度の推定を重点的に行う.しかし,負の相関を含む系も考究対象とする.3.1並列系 無条件の区間 ; 系の信頼度P(F^^~_s)の区間を2で述べた直列系の式で求める.これを式P(F^^~_s)=1-P(F_s)に代入すれば,無条件の区間が得られる.しかし,この式は複雑であるから,これよりも単純な(23),(24)式を誘導した.更に高次の式は,破壊条件数が増える以外同じである.条件付き区間 ; 正の相関を持つ積事象の下限値は,総ての基本破壊事象が独立であると仮定して求める.上限値は,P(F^^~_s)を独立の仮定に基づいて評価し,式P(F_s)=1-P(F^^~_s)に代入すれば求まる.結局,2,3次区間は,それぞれ,(28),(29)式で表される.総ての相関係数が負の場合の上限値は,条件付き区間(28),(29)式の下限値である.下限値は,無条件の区間の下限値である.正と負の相関係数を同時に含む系の上限値は,正と負の相関係数を,それぞれ,1と0と見なして計算する.下限値は,正と負の相関係数を,それぞれ,0と-1と見なして計算する.3.2直列系 無条件の区間 ; 破壊確率の区間としては,2で述べた既存式があるが,複雑である.(23),(24)式に基づく単純な(32),(33)式を誘導した.条件付き区間 ; 余事象の確率P(F^^~_s)を(23),(24)式で計算して,式P(F_s)=1-P(F^^~_s)に代入すれば,(34),(35)式の破壊確率の区間がえられる.高信頼度の系では,この式による確率が1に近くなるので,計算が難しくなる.その場合は,(36),(37)式を用いればよい.負の相関を含む場合の下限値は,正と負の相関係数を,それぞれ,1と0と見なして計算すれば求められる.また,上限値は,正と負の相関係数を,それぞれ,0と-1と見なして計算すればえられる.4例題 [例題1] n(n=1,2,…100)個の基本破壊事象を含む並列系がある.その基本事象の破壊確率は,φ(-0.5)である.事象間の相関係数ρ_<ij>は,総て等しく0.7である.(1〜10)次の区間推定を行う.系信頼性指標β_sと推定区間を図-1に示す.β_sは,lognにほぼ比例している.[例題2] 例題1と同じ問題で,n=50とし,pを変えた場合の区間推定幅を調べる.結果を図-2に示す.推定幅は,相関が高いほど狭まる.例題1と2より,同程度の信頼度を持つ基本破壊事象が多数あり,それら総てが互いに低い相関を持つ系では,高次の区間推定が必要になることが分かる.[例題3] n個の基本破壊事象を含む直列系がある.β_i=β=3, p_<ij>=p=0.7, n=(1,2,…50)とし,(1〜10)次の無条件と条件付きの区間を比較する.結果を,図-3と図-4に示す.両図を比べて見ると,2次以上の条件付き区間の幅は,無条件の区間に比べて明らかに狭い.[例題4] 例題3と同じ問題で,n=50とし,pの変化に対する推定幅を調べる.結果を図-6と図-7に示す.両図を比較すると,2次以上の条件付き区間の幅は,無条件の区間に比べて明らかに狭いことが分かる.[例題5] 文献-5の建築構造物の例題をとり上げる.(42)式の性能関数を持つ構造系がある.基礎確率変数は,互いに独立な標準正規分布である.係数は,(43)式を満足するように,(45)式の値を仮定する.β=3の場合の,条件付きと無条件の破壊確率の推定幅を比較する.表-1は,(n=10,20,30)に対する推定幅を系の破壊確率で割った値である.2-4次の条件付き区間の幅は,無条件の幅に比べて,はるかに狭いことが分かる.5結論 並列系の破壊確率の狭い区間推定を行うために,高次式を導いた.また,基本破壊モード間の相関係数を考慮し,総ての系に適用できる区間推定式を提案した.最後に,破壊確率の推定幅の既存法との比較と高次解による推定幅の減少を,例題を通じて調べ,本法の有効性を示した.
- 社団法人日本建築学会の論文
- 2001-09-30
著者
-
曽田 五月也
早稲田大学理工学部建築学科
-
寺田 貞一
東京都立大学
-
寺田 貞一
東京都立大学工学部建築工学科
-
寺田 貞一
東京都立大学 工学部
-
曽田 五月也
早稲田大学
-
小林 正典
EQEインターナショナル
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