99mTc-HMPAO SPECTを用いた未投薬および未服薬の統合失調症患者における非定型抗精神病薬risperidoneの局所脳血流に及ぼす影響に関する研究
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概要
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非定型抗精神病薬risperidone(RIS)の脳内作用機序を探る目的で,急性期の幻覚妄想状態にある未投薬および未服薬の統合失調症患者10例を対象としてRISの通常用量である一日当たり3mgを約2週間慢性経口投与し,その前後で99mTc-HMPAO SPECT検査による局所脳血流(rCBF)の絶対値測定とPANSSによる精神測定を施行し,個々の脳部位のrCBFに及ぼすRISの影響や,rCBFと精神症状との相関に・ついて検討した。.さら、に同一患者でRISの高用量(一日当たり4-6mg)投与後に同様の検討を行い,用量依存的な変化があるかどうかも調べた。結果を箇条書きで示すと以下のごとくである。1.RISの投与前と低用量投与後のrCBFの比較で左の中心前回でのみ投与後で投与前に比べrCBFは有意な減少がみられた。2.RISの投与前と高用量投与後では右帯状回,左下側頭回,右中心後回,右下頭頂小葉で有意差がみられ,投与後で投与前に比べrCBFは有意な減少がみられた。3.RISの低用量投与前後のPANSSによる精神病症状評価スコアの比較で,スコアの有意な減少,すなわち精神病症状の改善が見られた。またこの投与前後のPANSSスコアとrCBFの相関の解析で,幻覚と右の中側頭回のrCBFとの間に有意な正の相関がみられた。これらの結果は,RISの慢性経口投与が低用量時にはごく限定された大脳部位で,高用量時には比較的広い大脳領域で用量依存的にrCBFの低下を惹き起こすことを示唆する。これらのRISによるrCBFの低下は線条体におけるRISのD_2受容体遮断作用による視床を介した大脳皮質への興奮性投射系の抑制によると考えられる。高用量ではこの抑制作用が強いために低用量に比べ大脳皮質の比較的広範囲に脳機能の低下が生じ,rCBFが低下したと考えられる。また右の中側頭回のrCBFと幻覚との間の正の相関はRISによる側頭葉の脳機能の変化が幻覚の消長と関係することを示唆すると思われる。
- 金沢医科大学の論文
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