血圧日内変動からみた糖尿病患者の予後に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【目的】糖尿病患者では血圧日内変動異常が高頻度でみられるが,その成分のうち変動パターンかあるいは変動のレベルのどちらが生命予後に影響が大きいかを検討した。【方法】1988年から1998年までに入院した動脈硬化性疾患の既往のない2型糖尿病患者392例を対象に,同意を得た後24時間血圧を測定し,以後外来で経過観察を行い,2003年1月の時点で糖尿病と関連するイベントの発生状況を調査した。他病死を含め脱落例28例を除外すると,解析対象は364例となった。収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),平均血圧(MAP)及び脈圧(PP)の24時間,昼間及び夜間の1例ごとの平均値を算出した。【結果】観察期間中に致死的イベント50例,非致死的イベント97例がみられ,夜間SBPの降圧度が少ないほど,また血圧変動の各パラメーターの平均レベルが高いほどイベント発生率は高頻度であった。Receiver operadng characteristic(ROC)解析での曲線下面積(ROC_<AUC>)は,敦死的イベントでは24時間平均PP,非致死的イベントでは夜間平均SBPが最も大きく,それぞれの夜間SBP降圧度のそれより大きかった。この解析から24時間平均PP及び夜間平均SBPのcut-off値は,それぞれ54.3,116.5mmHgであった。糖尿病患者をdipperとnondipperに分け,さらに致死的イベントでは24時間平均PP,非致死的イベントでは夜間平均SBPのcut-off値で分類しKaplan-Meier曲線を描くと,いずれの場合も変動パターンに関わらず変動レベルが高い群で生命予後は不良であった。Cox比例ハザードモデルでは,致死的イベントでは24時間PP及び糖尿病罹病期間,非致死的イベントでは夜間SBP,糖尿病罹病期間及び血清クレアチニンが独立した危険因子となっていた。【結論】糖尿病患者における生命予後には,血圧変動パターンより変動レベルが高いことの影響がより強いことが示された。
著者
関連論文
- アルドステロン産生副腎腺腫を合併した腎血管性高血圧の1例
- 5年間の経過観察中に耐糖能異常を来たした Preclinical Cushing 症候群の1例
- 9.副腎皮質ホルモン産生能に及ぼす環境汚染物質ベンゾ[a]ピレンの影響(H2002-5)(一般口演,金沢医科大学医学会第39回学術集会)
- 11β-hydroxylase の活性低下を伴った 21-hydroxylase 欠損症(単純男性化型)の1例
- 急激に生じた耐糖能低下が,粘液産生膵腫瘍術後に改善した高齢NIDDMの1例
- 血圧日内変動からみた糖尿病患者の予後に関する研究
- 間歇的ホルモン変動を示した異所性ACTH症候群の2例