塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor, b-FGF)が再生耳介軟骨におよぼす影響について : 架橋ゼラチン徐放システムを用いた検討
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概要
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b-FGFは軟骨細胞増殖や血管新生作用をもち,tissue engineeringによる軟骨組織の再生には重要な因子と考えられる.しかし,水溶液として生体に用いると局所からの拡散消失が速く,再生組織局所での有効な濃度の維持は期待できず,生体内での軟骨再生の基礎研究も困難であった.そこで本研究では,ゼラチン粒子を用いた徐放化b-FGFを用いて,in vivoにおける軟骨再生への影響を検討した.[方法]実験1 : ^<125>I標識b-FGF含有ゼラチンを用いて,in vivoでb-FGFの徐放性を検討した.実験2 : イヌ耳介軟骨細胞・ポリマー複合体をヌードマウスに移植した.b-FGF含有ゼラチンは,Group Iでは移植する際に複合体へ直接付着させ,Group IIでは複合体を移植する4日前に皮下投与して用いた.b-FGFの軟骨再生効果を移植後5週目および10週目に評価した.[結果]ゼラチンを用いることにより,b-FGFは2週間以上の期間にわたり局所に残留した.イヌ耳介軟骨細胞・ポリマー複合体と同時にb-FGF含有ゼラチンを投与した場合,軟骨の形状は良好で,異調染色性および周囲組織の血管増生が認められ,軟骨マーカーのII型コラーゲン,血管マーカーの第8因子関連抗原の遺伝子発現が観察された.一方,b-FGF含有ゼラチンを4日前に投与した場合,血管増生はGroup 1と同様に認められたが軟骨の形状は乱れ,細胞配列も不規則で異調染色性も弱く軟骨細胞のアポトーシスが観察された.以上により,徐放性b-FGFが新生血管の誘導,軟骨組織の再生を促進することが明らかになった.また,b-FGFの前投与は軟骨の再生を抑制する可能性が示唆された.
- 近畿大学の論文
- 2003-12-25
著者
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