広範な術後気管粘膜壊死の回復過程を観察し得た縦隔扁平上皮癌の 1 切除例

概要

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59歳, 男性の大動脈に浸潤した縦隔癌(扁平上皮癌)に対し, 放射線療法, 化学療法を行った後, 大動脈弓切除, 再建をともなう拡大手術を行い, 腫瘤を完全に摘出した。術後, 気管分岐部より中枢側5cmにわたる気管粘膜の壊死を認めた。気管粘膜は, 術後152日目にようやく正常の粘膜色に戻った。術後160日目頃より歩行も可能となったが, 術後200日目頃より呼吸困難が増強した。気管支鏡にて気管分岐部から3.5cm口側の気管右側に管腔の約75%を占める肉芽が認められた。Empey指数[FEV_<1.0>(ml)/PEFR(L/min)]は11.1と高値を示した。バルーンによる気管拡張術, YAGレーザーによる焼灼術を施行し気管を拡張したところ, 呼吸困難は改善し, Empey指数は8.9に低下した。本症例では, 術前の放射線療法と大脈動弓置換術, リンパ節郭清術により気管支循環が障害され, 広範な気管粘膜壊死を起こしたと考えられた。
日本呼吸器内視鏡学会の論文
1989-09-30