ベンチャーキャピタルの投資と企業評価 : 日本における倒産予測分析適用の検討
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概要
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日本のベンチャーキャピタル(VC)の特質を検討し,同時に投資決定時,および投資後管理における企業評価プロセスに関しての留意点を展開させることが本稿の目的である。おおむね,民間VCを想定の対象とした上で,日本のVCの投資はアメリカに比較すれば,次の2点に顕著な特質を見出しうる。1)設立年数が長く,早期に株式公開が期待される企業への投資が多く,スタートアップ期の企業への投資が少ない。2)VCは主として投資先企業の資本政策についての助言機能が期待され,実際の事業運営についての介入および関与はそれほど多くない。投資における企業評価上の重要な着眼点は,これら日本のVCの特質を十分に勘案した上で検討されねばならない。筆者の想定は,まず1)を考慮した上で,投資先企業の財務諸表の有効性を評価,活用することにある。さらに,分析目的として投資上のリスクに着眼し,これまでの証券投資分析のリスク処理と立場を異にして,VC投資独自のリスクを明らかにした。すなわち,投資先企業の内部情報人手の制約性が懸念される2)の状況からも,VC投資の際はダウンサイドリスクである倒産リスクの把握とその防止という視点の重要性を指摘し,その際のリスク計量化のために,これまで行われてきた財務データを利用した倒産予測分析の適用が有用であろうことを導いた。実際の試行は,本稿において行われないが,一例として,判別関数法を用いた倒産予測分析がこのような特定目的の利用のために,サンプル収集問題を中心として改変されて用いられることで評価モデルのさらなる精緻化が可能となるであろうことを指摘した。
- 慶應義塾大学の論文
- 1992-12-25
著者
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