バンドトラップで捕獲されたマツ害虫とその天敵昆虫とクモ : こも巻き法の再評価
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
3種の素材(ムシロとビニールムシロ, ダンボール)を使用したバンドトラップを異なる環境のマツに設置し, 捕獲された害虫と天敵, クモを調査して, 慣用されている"こも巻き"法を再検討した.1)全捕獲個体の63.2%が昆虫, 34.6%がクモであった.マツ害虫と天敵はほぼ同個体数が捕獲された.前者ではマツワラジカイガラムシ, マツノホソアブラムシ, マツオオアブラムシとマツカレハが優占種で, 後者の91%はヤニサシガメであった.クモは20科43属51種が確認され, フクログモ科, エビグモ科, ハエトリグモ科が優占的であった.2)設置環境別では, 害虫と天敵, クモはともに林地など植生が比較的豊富で, 下草ないし落葉などで地表がおおわれている環境では捕獲数が少なく, 公園や施設構内など植生が貧弱で地表が落葉などでおおわれていない環境では多く捕獲された.3)害虫はダンボールで圧倒的に多く捕獲された.天敵はムシロで多く捕獲されたものの, ビニールムシロとダンボールでもかなり捕獲され, 有意差はなかった.この傾向は両昆虫群の中の主要種でも同様であった.マツカレハ幼虫はアブラムシとカイガラムシほど素材間で顕著な差はなく, ダンボール, ビニールムシロ, ムシロの順で捕獲された.クモの捕獲数は素材間で有意差はなかった.4)バンドトラップ法の効率化には, 越冬に入る前の早期設置と翌春の脱出前の早期回収が必須であり, ついで, 対象昆虫群に対応した素材の選定が要請される.
- 日本昆虫学会の論文
- 1995-12-25
著者
-
矢野 宏二
山口大学農学部昆虫管理学研究室
-
吉村 仁志
山口大学農学部昆虫管理学研究室:(現)農林水産省門司植物防疫所名瀬支所
-
木上 昌己
山口大学農学部昆虫管理学研究室
-
木上 昌己
山口大学農学部昆虫管理学研究室:(現)熊本県鹿本農業改良普及所
-
矢野 宏二
山口大学農学部害虫学研究室
関連論文
- バンドトラップで捕獲されたマツ害虫とその天敵昆虫とクモ : こも巻き法の再評価
- 『ダニと病気のはなし』, 江原昭三・高田伸弘編, B6 判, 214 頁, 1992 年 4 月発行, 技報堂出版, 1,545 円
- H. G. Amsel, F. Gregor & H. Reisser 編, Microlepidoptera Palaearctica Vol.1, Bleszynski, S. : Crambinae, Text-xlvii+553pp., 368 figs., Plate-133 plates (内 color plates は 31), Octavo size, 1965.
- Aegeria asamaensis (Hampson, 1919) の分布
- Franz Daniel, 1959, Monographie der palaarktischen Cossidae 3. Das Genus Holococerus Stgr., Mitteilungen der Munchner Ent. Gesell. 49, 102-160, 5 Tafeln
- キンケミノウスバ九州に産す
- スカシバガ科 6 種の日本, 朝鮮に於ける分布
- アルファルファアブラムシの日本からの発見
- Ground Beetles (Coleoptera, Caraboidea) Caught by a Light Trap During Ten Years