シンポジウムI「歩行の研究における隣接学際領域との連携 : 歩行における科学性」 : 運動制御と運動学習
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概要
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歩行の研究はこれまで主に運動のパターン生成という観点から行われてきた。しかし,人における歩行は随意運動のひとつとしてとらえられ,どんな状況にも瞬時の切り替えによって対応できる柔軟性を有していることが特徴的である。本稿では,歩行を地面に対する足の到達運動ととらえ,すでに手の到達運動で明らかになっている動的適応機構から,随意運動としての歩行の特性を論じようとする。眼前にシフトプリズムを装着すると到達運動に急速な適応の起こることがよく知られている。このプリズム適応は運動学習を研究する上で極めて有用なモデルである。この適応には大脳皮質運動前野腹側部が重要な役割を果たしていることがムシモル注入による可逆的障害実験から明らかにされている。また,単一ニューロン活動の多点同時記録により,運動前野腹側部内の神経ネットワークにおける信号伝達の変化あるいは同期発火がプリズム適応中に特異的に生じることが明らかにされつつある。このことは,視覚空間から運動空間への座標変換の過程で運動前野の神経回路が動的な変化を起こすことにより運動学習が生じることを示唆する。同様な変化は歩行時にも生じると考えられる。
- 社団法人日本理学療法士協会の論文
- 2003-04-20
著者
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