ブレオマイシンによる培養肺胞上皮細胞が形成した基底膜構造体の崩壊と再構築
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概要
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Bleomycinの気管内投与によって、肺胞は炎症状態になりその後線維化を起こす。その過程で、肺胞上皮細胞直下の基底膜も崩壊し、再生異常が起こると報告されている。しかし、平行して進行する炎症と線維化には種々の細胞とサイトカインが関与するために、基底膜の崩壊と再生異常がどの様な機構で起こるか不明である。これまで我々は、肺線維芽細胞が包埋されたI型コラーゲンゲル(Fgel)上、または風乾で圧縮したコラーゲンゲル上にFgelの代わりにマトリゲル(MG)存在下で、不死化肺胞II型上皮細胞(T2細胞)を播種し10〜14日間培養すると(T2-FgelまたはT2-fib-MG培養系)、連続的な基底膜緻密板(LD)がT2細胞直下に形成されることを報告した。今回は、T2-Fgel及びT2-fib-MG培養系を肺胞上皮組織として用い、0.1 unit/ml bleomycinで3日間処理した後、bleomycinを除いた培養液でさらに2週間培養を継続した。この結果、LDの崩壊と再生を、炎症性細胞の存在を必要とせずに、in vitroで再現することができた。初めに、T2-Fgel培養系において、bleomycin処理後4日目から7日目には、LDは基底面から乖離・断裂する一方で、新たに不連続なLDが形成され始める等、LDの2重化が進行した。14日目には、新たなLDがほぼ完成したが、旧LDの一部は新LDと癒着して残存する状態も散見された。次に、T2-fib-MG培養系においても、LDの崩壊が同様に観察されたので、LDの崩壊における線維芽細胞の寄与は少ないと考えられる。また、GF-reduced MGの容量依存的に不完全ながらLDが再生されたことは、線維芽細胞の役割の一つは、基底膜成分(LN,EN)の供給にあるが、再生が不完全なことからサイトカインの関与も推測される。
- 日本結合組織学会の論文
著者
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古山 昭子
国立環境研究所・環境健康部
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持立 克身
国立環境研究所・環境健康部
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持立 克身
国立環境研究所環境健康研究領域
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仲間 純子
国立環境研究所 環境研究基盤技術ラボラトリー
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中村 みなみ
国立環境研究所 環境研究基盤技術ラボラトリー
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古山 昭子
国立環境研究所
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古山 昭子
国立環境研
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